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東アジア問題の地球規模化

10月18日  センター長、特任教授 竹内宏


アメリカ、中国、東アジア諸国(日本を含む)では、97~ 98年のアジア通貨危機後、健全な貿易の三角型関係が生まれた。アメリカは、国内消費の膨張に支えられて中国からの輸入が激増し、中国は部品や材料を東アジアの国から輸入して、労働集約的な組み立て作業を行ってアメリカに輸出した。

東アジア諸国では、高度な技術を必要とする中間財生産が拡大して中国に輸出され、貿易収支は黒字になった。東アジアが世界経済の成長をリードする時代になった。アメリカ企業は、中国に対する直接投資を拡大して、高収益をあげた。

しかし、中国も、また、高級な中間財を生産し始めた。リーマンショックの時、支出された膨大な緊急財政資金は内需を刺激し、中間財の国内生産が拡大して、産業構造が高度化した。外資は中国市場の急膨張と産業の高度化に対応して、ハイテク産業の工場だけではなく、その研究所も移転した。中国は主要産業について、中間財や完成品も、新製品の開発も可能になった。中国経済が内需依存によって自律的に成長すると、三角型貿易は消滅し、東アジア諸国は独自の発展経路を求めなければならない。

中国の将来にとって、重要な課題として、環境・汚職・老齢化の他に、エネルギーの確保がある。中国は人口と対比すると、著しいエネルギー不足国であり、石油(天然ガスも含む)では、最近10年間で輸入数量は4倍に増え、アメリカに次ぐ輸入国になった。

13億人が先進国並の生活水準になると、生産性の向上や省エネに努めても、石油需要は現在の数十倍に達するだろう。中国は政治的にアメリカのシェールガスを当てにできない。そこで世界的規模の油田開発計画を進めている。

第1は南シナ海や東シナ海の海底油田であり、周辺国を武力で威嚇している。第2はアフリカと中東であり、ナイジェリア、ザンビア、アンゴラ等主要産油国に巨額な借款を約束し、開発を援助している。大産油国のイランには、武器と核技術を輸出し、友好な関係にある。第3はシベリア油田の開発への協力だ。

石油の海上輸送ルートの確保も重要であり、中国は東シナ海・南シナ海・インドネシア周辺の海域や、インド洋の沿岸地域の制海権を握りつつある。ミャンマー、スリランカ、パキスタン(ホルムズ海峡近く)には、大規模な港湾や海軍基地が建設されている。 陸上ルートについては、ミャンマーから雲南省へ、またパキスタンから中国西部へ、それぞれパイプラインや高速道路の建設がはじまっている。シベリアのパイプラインは中国東北部に伸びる計画だ。

現在の中国は、アメリカのように覇権国として世界全体の経済・軍事バランスを考慮する必要がない。専ら、自国の将来を安全にする戦略を練っており、巨大国であるから、それは地球規模の戦略になり、各地でアメリカと経済的・軍事的に争い、またいろいろな民族問題や宗教問題を起こすだろう。 中国経済の発展とともに、東アジアの問題はアジア・西太平洋・インド洋を巡る大問題に変わった。尖閣諸島問題はその一部である。

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