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アメリカの政治危機と中東

10月3日  センター長、特任教授 竹内宏


オバマ大統領は判断を間違え、「化学兵器の使用」をレッドラインと決めて、それを冒した時には、化学兵器工場や武器庫に報復ミサイル攻撃を実施すると声明し、同時にアサド政府軍が、化学兵器を使用したと断定した。そのとき、次の問題があった。

1 敵味方が国内に混在している国で、サリンの工場・武器庫を探索し、かつサリンの漏洩による大被害なしに攻撃できる技術は、世界に存在しない。

2 政府軍が敗れると、少数民族のアラウィ派は皆殺しにされ、サリンの散布より凄惨な事態が起きる。

3 反政府軍は、多数の民族の集合体であり、最近、反政府軍では、アルカイダ派の影響力が強まり、殉教者が中東、アフリカから集まっている。アメリカの新しい強敵に生まれ変わった。

4 化学兵器は反政府軍が使用した疑いがある。

こうした状態で地中海に配置された駆逐艦から、政府軍にミサイル攻撃をすれば、シリア内戦が激しくなり、アメリカは陸上部隊の派遣に追い込まれる危険性がある。

困り果てたオバマ大統領は、ロシアによる化学兵器の国際管理案に救われた。オバマが外交上の大失敗を犯した理由は、まずシリアは中東における軍事的政治的バランスを保つ軸であって、ここで動乱が発生すれば中東全体に拡大するという、中東専門家の意見を全く無視したからだ。

次に、オバマの関心は、是非とも2014会計年度予算を成立させ、不成立による一部政府機関の閉鎖といった最悪の事態を避けたいという国内問題に向いていたからだ。アメリカの財政は、アフガニスタン、イラクの2つの戦争とリーマンショックによって、すっかり疲弊している。そうした中で、オバマは彼が政治的生命を賭け、かつ歴史に名を残すために絶対必要な医療保険改正法を施行しなければならない。

共和党の主張に応じて、施行期間を一旦延期すると、来年も延期され、骨抜きにされる可能性がある。経済力が世界一の国で、病気になっても医師にかかれない。空き家が溢れているのにホームレスが多い。これはどう考えても変だ。オバマは社会福祉を充実させたいが、今まで、アメリカは中東戦争に深入りし、戦費を使いすぎた。今度こそ、深入りを避けたい。その間に、ロシア、中国、イラン、トルコのイスラム教集団、パキスタンのパシュトゥーン族(約4000万人)、エジプトの軍事政権など、反米勢力が国際的な多様な会議を通じて力を増すだろう。さらに中東、アフリカにアルカイダ派の力が伸びている。アメリカは、内外の危機に直面している。

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