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近未来からアジアを見る

7月17日 副センター長、特任教授 濱下武志


50年後のアジア―高齢化するアジア労働人口とイスラーム地域の役割
 現在、アジアにおいても環境問題・資源問題・人口問題というグローバルな課題が存在している。とりわけ人口問題では、2030年、2050年などに大きな転機が訪れる事が確実視されている。その結果、アジア人口問題は3つの地域に分類される。すなわち、1)工業化した地域は高齢化のピークを越え、2)中国は2025-30年を分水嶺として、その後急速に高齢化社会に転じる。このことは、中国の経済発展の先行きを示唆しており、社会資本を充実させる時間はそれほど長くは残されてはいないことを意味している。
 2050年に世界の総人口は、これまで指摘されてきたような人口爆発は起こらずに、上限の91.5億人止まりとなると予測されている。それでも、現在の68.3億人と比較すれば、相当数の増加ではある。その結果必要となる世界的な人口流動化(労働力の再配分)や経済活動の地域的再編などの課題に直面する(Jack A. Goldstone,'The New Population Bomb,' Foreign Affairs, 89.1, Jan/Feb 2010)。そこでは上記の2つの異なるアジア地域に加え、3)東南アジア・中央アジア・南アジア、さらにはトルコ・イランなど中東のイスラム地域を中心とする”若いアジア”が登場し、アジアの労働人口の重要な部分を構成することになる。このように、グローバルに今後を見据えた近未来のアジアの変化から、日本・中国をはじめとするアジアの現在は条件付けられていることがわかる。

アジア地域連携の3つのシナリオ
 同時に、他方では、グローバル・ヒストリーの視点から、アジアの歴史的な広域地域秩序に見られた多様な歴史的地域とそれら相互のダイナミズムを考えてみよう。そこでは、「多極化」「中心ー周辺関係」「周縁ネットワーク化」「都市化」「海域と陸域の交渉」などによって生ずる地域=海域的な結びつきやそれに伴う統治理念の変化が現れることになろう。これら地域間に生ずる交渉・競争関係を多角的に組み合わせてみると、3つの地域秩序モデル(型)が導かれる。それらは、A) 圏域として構想されたグローバルな広域アジアであり、1000年規模の長期の歴史では主にはユーラシア東部地域を中心とし、そこと周縁との地域連関からなる。これは「朝貢秩序」を理念とした歴史的な地域秩序モデルに近似している。次に、B) 労働人口の推移にみた3つの性質を異にした、中国を中継しながら東アジアから西アジアへと重心が移行していくアジアの域内地域連関が想定される。あたかも雁行モデルのように、2030年に中国が迎える分水嶺を境として、高齢化し工業化した東アジアを中心とする東アジアから、東南アジア・中央アジア・西アジアの若い労働人口を要する西アジアへの移行である。すなわち、アジアにおける労働人口増加地域の移行を中国が中継しながら重点(中心)地域を移行させるモデルである。

アジア沿海都市ネットワークモデル
 さらに C)沿海の中小都市を繋ぐ沿海都市ネットワーク・モデルが考えられる。現在アジアは、上海、東京、マニラ、ジャカルタ、ムンバイやイスタンブールなど、大都市に人口が集中しているが、歴史的にはむしろ沿海・沿江の中小都市間による交易ネットワークが形成されていたことが注目される。北欧のハンザ同盟などにさかのぼる歴史を持つバルト海沿海都市連合Union of the Baltic Cities(http://www.ubc.net )のように、アジアにおいても長い歴史を持つ沿海・沿江都市ネットワークは、今後のアジアの地域運営に重要な役割を果たすと考えられる。
 想定されるこれらの3つのアジア地域連関モデルをめぐって、これからのアジアの地域構想が検討されると考えられる。これらの近未来から提示されている条件に対して、現在からどのような準備が必要であるかという点が問われている。具体的には、東アジアにおけるイスラム人口の活力をどのように取り込むか、また社会的・文化的にどのように対応するかという事が問われている。

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