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上海G20からみえる世界経済の新たな課題

3月14日 特任教授 柯隆


今の世界経済は方向性を失い、ある意味では、危機的な状況にあると言っても過言ではない。その中で開かれたのが、上海G20財相中央銀行総裁会議であった。そのコミュニケーションをみるかぎり、参加者の間で世界経済への認識が共有されているようにみえる。しかし、G20による危機への対応について、その有効性は過去に一度も確認されていない。こうしたサミットと国際会議の問題点は、合意事項が拘束性を持たないことにある。

今の世界経済の最大の問題といえば、これまでの数十年の技術革新の結果、供給が需要を遥かに上回っていることである。供給過剰と過剰設備の問題において、真っ先に注目されるのは中国である。しかし、中国が世界の工場の役割を果たせたのも、先進主要国の直接投資の結果であり、中国だけの問題でないことは明らかである。

国際経済学者の一部は、原油価格の下落は中国の需要不足によるものと指摘している。過去1年間の中国の内需の落ち込みは原油価格をここまで下落させる力があるのだろうか。中国の石油消費は完全に輸入に依存している。原油価格の下落でもっとも困る国は産油国であり、否、国家の財源が石油の輸出に依存している国である。なぜ原油の生産が調整されないのだろうか。

市場経済では、価格が低下すれば、生産量が自ずと調整され減産される。OPECは今回の原油価格の下落において調整能力を発揮できていない。中東諸国は宗教対立により、話し合いができないでいる。原油価格の下落によりもっともロスを被るのはロシアである。アメリカはクリミア併合をきっかけにロシアに対する制裁を講じている。このことからアメリカは本気で原油価格の安定を図ろうとしていないのではないかと推察される。

こうした論点整理から原油価格の下落はアメリカによるロシアへの経済制裁が発端であることがわかる。ロシア経済は確かに大混乱に陥っている。同時に、世界経済もその余波を受けている。

一方、中国経済の減速は構造的なものである。すなわち、それは中国政府がコントロールできる動きではないということである。中国が無理に成長率を押し上げると、さらなる悲劇を生む可能性が高い。今後は、中国経済の成長率について、5-7%を前提としたうえで、世界経済の成長を目指していく必要がある。にもかかわらず、世界の主要国は、これまでの中国経済の高成長に慣れすぎてしまったようだ。

今回のG20の最大の過ちは参加国が経済成長を持続するための財政出動を唱えたことである。財政出動を増額すると、供給をさらに増やすことになる。過剰設備が削減されないかぎり、さらなる財政出動は経済のリバランスに寄与できない。否、逆に経済のインバランス(不均衡)を拡大させる恐れがある。

そのなかで、各国は需給ギャップを穴埋めするために、行き過ぎるほどの金融緩和を実施している。必要以上に金融市場に流動性を注ぎ込むことは資本効率を下げることになるだけでなく、同時に、悪性インフレを引き起こす恐れがある。むろん、日用品についてインフレが起きる可能性は低いが、心配されるのは資産インフレである。現在、国際金融市場が大きく乱高下するのは、まさにコストの安い流動性が際限なく供給され、金融投機が助長されているからである。今は、まさに乱世である。

ゲーテのいう通り、「動揺する時代に動揺して心の定まらぬものは不幸をいっそう増やし、それを広げるばかりだ。だがしっかり思いを定めているものはよりよい世界を作っていく。」

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