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粉ミルクの信頼回復を狙う乳製品業界の再編(中国)

粉ミルクの品質・安全強化のため、中国政府は、生産プロセスなどに厳しい要求を行うとともに、業界再編の方針を打ち出した。政府関与による再編が品質・安全の問題を解決できるか等、メディアが見解を報じた。

9月2日

2008年に起こった「三鹿集団」の「メラミンミルク」事件以来、ミルクは中国で食品安全性問題の代名詞となった。その事件の後でも、2010年の「聖元乳業」のホルモン剤入りの粉ミルク事件、2012年の「伊利乳業」の水銀規準を超えた粉ミルクのリコール事件、「南山奶粉」の粉ミルクから発がん性物質アフラトキシンM1が検出された事件などが相次いで起こった。中国の消費者の国産粉ミルクに対する不安や不信感がどんどん高まり、海外から外国ブランドの粉ミルクを大量に買い占める動きが広まった。中国のミルク需要があまりに大きいため、海外各国では粉ミルクの供給が不足し、イギリス、オーストラリアやドイツなどで販売制限が実施された。特に香港では、香港からの粉ミルクの持ち出し制限が施行され、持ち出しは24時間以内に2缶までと定められた。一方、5月31日、国務院が常務会議で、粉ミルクの品質安全を強化するために乳製品業界の再編合併を指示し、産業全体の集約度と競争力を高める必要があると強調した。なお、国家質量監督検査検疫総局が所管する「輸出入牛乳・乳製品検査検疫監督管理弁法」が5月に施行され、粉ミルクを含む輸入乳製品の検疫が厳しくなった。6月20日には、国務院が「乳幼児粉ミルク品質安全工作の更なる強化に関する意見」を発表した。粉ミルク生産企業の生産プロセス、検査過程、人員条件、環境条件などに対して厳しい要求をし、輸入ミルクの販売条件も厳格に規定した。こうした中、6月19日に発表された、中国乳製品最大手「蒙牛乳業」が粉ミルク中堅の「雅士利集団」を約110億香港ドルで買収するニュースが大きな注目を集めた。

「蒙牛乳業」の昨年の売上高は360億元に達したが、その9割は利益率の低い液体ミルクだった。液体ミルクは管理が難しく、市場もほぼ飽和状態になっている。同社は粉ミルク市場にも参入したが、シェアは低い。一方、粉ミルク生産量は5位だが輸入源乳の国内加工が100%という経営モデルをとる「雅士利集団」にとって、5月1日に国家品質監督検査検疫総局の発表した「輸出入乳製品検査検疫監督管理規則」がもたらす影響は大きい。「雅士利集団」にとって「蒙牛乳業」の傘下に入ることは、シナジー効果が高いといえる(人民日報)。なお、『人民日報』は、6月21日に「国産の粉ミルクの一部の指標は国際基準より厳格、安心して飲める」と題した記事を掲載した。「国産の粉ミルクに含まれる乳糖とセレンについては、国際食品規格委員会の基準より厳しく規定されている。メラミンミルク事件以来、乳製品企業が生産や品質管理の改善を行ったため、現在、国産の粉ミルクの品質安全指標と栄養指標は海外ブランドと大差がなく、安心して飲める」と述べた。

『南方週末』に6月23日に掲載された「“国進民退”は果たして粉ミルクを救えるか」の記事では、「工業情報化部が6月18日に主催した食品安全会議で、2年以内に売上20億元以上の大手乳製品企業10社に集約させる方針が示された。その背景には、工業情報化部が国産の粉ミルクのイメージアップのため、国営企業の背景を持つ乳製品企業にヒアリングをしたことがある。これらの企業が政府に対しサポートを求め、自社牧場建設のための補助金の要求を訴えた。一方、粉ミルクの生産ライセンスを持つ企業は127社あり、政府は、産業集約度を高めることにより市場を管理監督しやすくなるよう、再編による統廃合で産業全体の集約を促した。但し、政府の関与による国進民退が国産の粉ミルク問題を解決できるかが懸念される。民営企業は自由競争による再編を期待している。米国のような入札方式の乳製品ライセンス配布が参考になると聖元国際董事長の張亮氏が伝えた」と述べた。

(柯隆 編集)

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