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フォーチュン・グローバル・フォーラムが成都市を開催地にした理由


世界が注目する成長都市を開催地としてきたフォーチュン・グローバル・フォーラムが、今年は成都市で開催された。成都市が選ばれた理由として、今後、同市を中心とする西部地域が中国の成長を牽引するとみられることが挙げられる。また、労働コストが東部地域に比べ低いこと、国際線の増便、知的財産権保護のための市政府の取組等、投資環境が整ってきていることも同市の魅力である。

6月26日

さる6月6日から8日にかけて、米経済誌『フォーチュン』が主催する恒例のフォーチュン・グローバル・フォーラムが成都市で開かれた。今年のフォーラムは「中国の新たな未来」をテーマとし、中国の経済成長、西部地域の発展及びグローバル社会における中国の役割に焦点を絞り、主な議題は中国の世紀、資源ソリューション、イノベーションと技術及び世界の金融と経済回復と設定された。中央政府は今回のフォーラムを非常に重視し、習近平国家主席は祝電を送り、李克強総理が北京市で企業家と会見し、また張高麗副総理が開幕式で基調講演を行った。出席者は世界トップ500社の企業家、各国の政府関係者、学者など600人を超え、過去最大規模となった。フォーチュン・グローバル・フォーラムはこれまで、経済的に活力のある世界の都市を開催地としてきた。今回、成都市での開催が、上海、香港、北京に続く中国での四か所目になる。中国の経済成長が緩やかに減速する中、成都市を開催地にしたのは、西部の経済発展が中国経済の成長を牽引すると期待されているためではないかと多くのメディアが推測した。

今回のフォーラムに関する報道をみると、中央政府系メディアの動きが目立っている。『人民日報』はフォーラムに関するニュース以外に、「成都市が72時間以内の外国人滞在者をノービザに」、「世界トップ500社のうち、238社が成都市に拠点を構えている」、「成都,都成!」(中国語では、「成都市では、すべてが成功する」という意味の言い回し)と、外資企業が称賛する投資環境についても報道した。『新華社』では、「フォーチュンの選択、世界トップ500社の目に映った成都市のスピード」などの報道が続いた。なお、中央電視台は総計5時間のテレビ報道を放送し、『光明日報』、『経済日報』や『中国日報』は3日連続で特集報道を掲載した。

成都市が開催地になった理由について、各紙は論説を掲載した。「『中国への投資は西部へ、西部への投資は成都市へ。世界で販売されるノートパソコンの中で、2台のうち1台のチップは成都市で生産されたものとなる』とインテル中国執行董事戈峻氏が語った。『成都市は優遇政策によって企業誘致をするのではなく、安心感を与える政府サービスによって企業を引き寄せている。例えば、知的財産権に関心が高い外資企業のために、英語と国際法が分かる裁判官を配置したり、知的財産権について訴訟ができる裁判所を設けている」と成都市の市長葛紅林氏が伝えた。また、『フォーチュン』誌は中国の新たな未来が中国の西部にあると、成都市を開催地にした理由を伝えた。成都市は2012年のGDPが8138.9億元に達し、主要都市における順位が2008年の7位から3位になった。西部内陸部の代表都市となった成都市は中国経済の持続的成長のための新しいエンジンになると予測されている」(人民日報)。
「中国が西部大開発の戦略を打ち出してから12年が経過し、その基盤準備がすでに整っている。これまで物流コストが最も懸念されていたが、成都市の双流国際空港の国際線が58本になり、中国の四つ目の国際ハブ空港となった。なお、フォーラムの開催中に、ユナイテッド航空が来年4月にアメリカ直行便を開通すると発表した。その上、西部地域の大量かつ安価な労働力及び人材資源が、成都市の大きな優位性として働く。労働コストは中国製造業の成長の重要な支えであるが、東部地域の製造業が伸び悩んでいる一因はそこにある。2011年の珠江デルタの労働コストは11%上昇し、2012年には8%上昇した。ただし、中国での生産加工を目的とした外資企業の投資はここに来て変化し、中国市場を狙う外資企業が増えている。この変化は、大きなチャンスを意味すると同時に、プレッシャーでもある。成都市の市長葛紅林氏は、成都市の急速な人口増加によるインフラや環境への影響が新たな課題となっていると伝えた」(南方週末)

(柯隆 編集)