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第7回 中国経済をリセットするリコノミクス(12月6日)

先日、日本銀行がサプライズの量的緩和を発表したと同じように、中国人民銀行もサプライズの利下げを発表し、金融緩和へと軌道修正を行っている。やれることは何でもやるという日本銀行の確固たる緩和姿勢とは反対に、李克強首相は拙速な金融緩和よりも構造転換を優先するとしていた。しかし、今回の利下げで李克強首相の政策姿勢が大きく転換した。

まず、第三四半期の経済成長率は予想より低かった(7.3%)。今の中国経済のファンダメンタルズからすれば、7%半ば成長は決して低くないが、トレンドが下がっているため、このままでは、景気はさらに減速する可能性が高い。

無論、李克強首相の悩みは杞憂ではない。拙速な金融緩和を実施すれば、不動産バブルは再燃する恐れがある。なぜならば、金融緩和をすれば、新たに放出される流動性はそれを必要とする製造業に流れず、より高いキャピタルゲインを求めて不動産市場に流れる可能性が高い。

リコノミクスが掲げる構造転換は遅々として進んでいない。投資依存の経済は消費依存に転換していない。そして、マクロ統計でみた資本効率は悪化を続けている。さらに、景気が減速しているが、大気汚染は少しも改善されていない。

しかし、李克強首相はこれ以上の景気の悪化を看過できない。なぜならば、このまま経済成長率が7%を切れば、李克強首相の責任問題に発展する可能性が出てくる。経済政策のプライオリティにおいては構造転換も重要だが、まずは景気をある程度押し上げなければならない。これはまさに綱渡りのような舵取りである。

李克強首相がもっとも警戒するのは1990年代初めに日本が経験したバブルの崩壊とその後、20年も続いたデフレである。もし中国でバブルが崩壊した場合、投機・投資を目的に中国に流れた外貨は一瞬にして海外へ逃避してしまう。それは1997年7月に東アジアを襲ったアジア通貨危機の悪夢と同じである。そして、中国の不動産市場に投資しているのは外資だけではない。金融機関は理財商品と呼ばれる投資信託の金融商品を販売して巨額の資金を調達し、そのかなりは不動産市場に流れているとみられる。同時に、地方政府が借り入れた債務の一部も同様に不動産市場に流れた。要するに、中国版サブプライムローン危機に襲われるリスクが懸念されている。

ここでもっとも警戒されるのは、李克強首相がバブルを心配して一気に金融引締政策を実施することである。経済学者の間では、金融政策は紐のようなもので、インフレのようなオーバーヒートをしたときには、利上げを実施し金融引締政策をもって過熱した景気を急速に冷やすことができるが、デフレのような景気後退局面で金融緩和政策を実施しても景気を押し上げることは簡単ではないという指摘がある。

中国にとって、20年前に日本で起きたバブル崩壊の教訓は重要な参考となる。李克強首相は、構造転換を実現しようとすれば、適度な金融緩和と大胆な制度改革を同時に進める必要がある。あらゆる経済改革も短期的にはゼロサムゲームかマイナスサムゲームとなる。したがって、経済改革を成功させるには、ある程度の経済成長を維持することが必要条件となる。不動産バブルの再燃を心配するならば、適度な金融緩和を取りやめるのではなく、思い切った制度改革を実施することが重要である。

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