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第11回 拙速な金融緩和で構造転換遅れる(4月28日)

中国経済の先行きは不透明さが増している。もともと構造転換を最優先課題と掲げる政策当局は政策方針を完全に転換している。すなわち、経済の構造転換よりもとりあえず景気の下支えを優先にするという方針転換である。政策当局が抱える古典的な悩みは構造転換と景気の下支えのディレンマであり、そのバランスをいかに取るかにある。日本も長い間、財政健全化が先か、景気の下支えが先か、という悩みを抱えていた。安倍政権は経済成長がなければ、財政健全化はしないと認識を改めた。

しかし、中国にとって構造転換と景気の下支えの優先順位からすれば、明らかに構造転換が優先されなければならない。にもかかわらず、政府は構造転換を先送りし、景気の下支えを優先にしているようだ。今年に入ってから、利下げ、預金準備率の引き下げ、金融機関に対する窓口指導による流動性の放出など一連の景気刺激策が実施された。

政府が発表した2015年1-3月期の実質GDP伸び率は7%だった。仮にこの7%成長は正しいものであるとすれば、拙速に金融緩和を進める必要はない。むろん、政府として心配するのは、景気が7%前後で下げ止まらず、6%台に突入してしまえば、失業率が上昇し、社会不安が深刻化することである。

問題は、実体経済の改善がなければ、流動性の放出に伴う景気刺激策は単なるマネーゲームに過ぎず、持続可能な経済成長は実現できないということだ。それどころか、消費の実需と企業の投資マインドの改善がないなかで、無理に流動性を市場に放出することでバブルが再燃する恐れがある。

今年に入ってから、上海株式市場の株価総合指数は急上昇している。そもそも株価は景気のバロメーターと呼ばれている。中国の景気の見通しは悪化するなかで、企業の業績も改善しておらず、なぜ株価だけが急上昇しているのだろうか。答えは簡単である。それは政府が過剰流動性を供給するマネーゲームの結果である。

中国人は過剰貯蓄している。マクロでみた貯蓄率は50%を超えている。巨額の貯蓄は投資するマーケットが見つからず、一時期な不動産バブルをもたらしていた。今は、政府は不動産市場をコントロールしているため、新規投資が減っている。地下のマグマのように蓄積されている家計の貯蓄は株式市場に流れている。それを促したのは政府である。

3月に開かれた全国人民代表大会(国会に相当)では、李克強首相は質の高い成長を目指すと強調した。質の高い成長とは、効率を高め、環境に配慮する経済成長のことである。しかし、マネーゲームを繰り広げても、マクロ経済の効率は一段と悪化するはずである。

今後の経済成長の見通しとして一連の緊急的な金融緩和策により、株価上昇に伴う資産効果も加わり、2015年の経済成長率は下げ止まる可能性が高いと思われる。むろん、ここで、中国経済は大きくリバウンドするとは思えないが、政府が掲げる7%前後の成長目標は達成できるだろう。

しかし、構造転換を軸とする経済改革が先送りされることで、中国経済は中長期的にみて、下押しされる圧力が一段と強まるものと思われる。中国政府はアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立を梃子に、外需の開拓に取り組む姿勢を鮮明にしているが、内需依存の経済成長を実現できず、外需に期待することで中国経済の成長は一段と不安定化するものと思われる。習近平政権が誕生してから2年経過したが、政策運営について早くも黄色信号が点滅している。

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