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第12回 問われる日本のAIIB不参加の合理性(6月24日)

来たる6月29日に、中国主導で設立されるアジアインフラ投資銀行(AIIB)の調印式が北京で行われる予定である。この新しい国際金融機関に世界1位と3位の経済大国である日米は参加しない。日米両政府のAIIB不参加の理由は、その運営についてガバナンスと透明性が担保されていないからだといわれている。しかし、国際金融機関の運営について豊富な経験を持つ日米の参加こそ、そのガバナンスと透明性の確保にもっとも寄与するはずである。

とくに、日本についてAIIBに参加しない合理性は見当たらない。アジアのインフラ整備に焦点を当てる同銀行の設立は明らかに時宜を得ている。だからこそ東アジアのほとんどの国はAIIBへの参加を表明している。現段階で日本と北朝鮮だけはAIIBに参加しないとされている。まったくの偶然かもしれないが、AIIBの設立が確実となるなかで、5月に安倍首相はアジアのインフラ整備に今後5年間で1100億ドルを投じると表明した。明らかに、中国をライバル視した決断だったのではなかろうか。

安倍首相は一貫して日中関係が戦略的互恵関係と主張しているが、実際の外交戦略をみる限り、ライバル関係の色彩が濃厚である。日本にとり領土領海の領有権をめぐり妥協できないのは仕方のないことだが、東アジアの繁栄に寄与するAIIBを成功させるための日中協力はあっていいはずである。

そもそも既存の国際金融機関はアジアのインフラ需要のみならず、経済危機への対応にも十分に応えることができない。1997年に起きたアジア通貨危機のとき、IMFが求めるコンディショナリティ(融資条件)はどれほど理不尽なものだったのか、記憶に新しい。そのワシントンコンセンサスと呼ばれるコンディショナリティによって経済危機の傷跡はいっそう深まってしまった。

それ以降、アジアによる国際金融機関の設立に対する要望が高まり、それに応える形で日本主導によりアジア通貨基金(AMF)の設立が模索されたが、アメリカの反対によって頓挫してしまった。AMFに遥かに及ばないが、チェンマイ・イニシアティヴと呼ばれる通貨スワップ協定が結ばれた。しかし、これはあくまでも有事に備えたレスキューファンクション(救済機能)である。アジアには平時のインフラ整備に融資する国際金融機関はいまだ設立されていない。ちなみに、アジア開発銀行(ADB)は貧困削減に重点を置いている。

むろん、AIIBの運営について心配がないわけではない。最大出資者の中国が拒否権を行使するかどうかは明らかではない。もっとも心配されるのはAIIBが中国自身のための国際金融機関になることである。アメリカ主導の世界銀行やIMFはワシントンコンセンサスに基づいて運営されているのと同じように、このままでは、AIIBの運営については中国の意思が多く反映される可能性がある。だからこそ、日本はそれに参加してAIIBが正しく運営されるのを促すべきである。日本が積極的に参画することでAIIBの運営が正常化される担保となる。

やはり、ここで問われるのは日本のAIIB不参加の合理性である。アジアの繁栄のために、日本はAIIBに参加しない理由はない。AIIBが適正に運営されるために、日本はそれに参加すべきである。日本自身のためにも、AIIBに参加すべきである。なぜならば、アジアにおけるインフラ整備を進めるうえで、日本企業の技術とノウハウが必要であり、これは日本企業の利益にもなると考えられるからである。政治指導者が、自らの思い込みや偏った心情でAIIBに参加しないと決断しているとすれば、国際舞台における日本の役割と存在を減退させる行為となる。

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