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第13回 中国の金融政策と株式バブルの行方(7月9日)

上海株式市場の株価は急落している。マスコミからの問い合わせでなぜ上海の株価が急落したのかとよく聞かれる。私の答えは至ってシンプルで、そもそも根拠のない株価の高騰だから急落するのは当たり前のことであり、不思議ではない。中国国内で取材している経済担当の記者は、今回の株価急落は個人投資家が手持ちの株式を売りに出しているから株価が急落していると報じている。このような報道はまったくの勘違いと言わざるを得ない。

株価の急落をもたらしたのは個人投資家ではなく、彼らはそれほどのパワーを持っていない。それよりもシャドーバンキングと呼ばれるファンドなどの機関投資家が真犯人である。そもそも金融機関とファンドはシャドーバンキングで集めた巨額の資金を不動産市場に投資していた。しかし、2年前から政府は不動産市場をコントロールするようになり、行場を失った流動性が株式市場に流れ、株式バブルを引き起こした。

多くのエコノミストは、マクロ経済の実情と上場企業の業績を鑑みて目下の株価の均衡水準はせいぜい2500ポイント程度とみている。しかし、わずか1年で上海の株価総合指数は2.4倍に上昇し、5166ポイントに達した。利益を確定しようとした金融機関とファンドが株式を売ったことで株価は急落した。

個人投資家は口座数において8割以上を占めているが、ほとんどは零細な投資家であり、噂や株式の値動きをみて株式投資を行っている。たとえて言えば、彼らは揚子江の上のたくさんの小さなボードのようなもので波を起こすことがほとんどできない。それよりも、シャドーバンキングで巨額の資金を集めた金融機関やファンドは、巨大なタンカーのようなもので、荒波を引き起こしている真犯人である。

中国の政策当局は意図せぬ状況に直面すると、往々にして陰謀説を唱えることが多い。今回の株価高騰とその後の急落の背景に陰謀があるとすれば、まず株価の高騰を誘導したマスコミとそれを看過した政策当局ではなかろうか。そもそもマクロ経済は減速を続けている。上場企業の業績も改善されていない。不動産市場に投資している金融機関とファンドは巨額の含み損を抱えている。その穴を埋めるべく、株価の高騰を図り、零細な投資家から巨額の資金を巻き上げた。

仮に株価の均衡水準が2500ポイント程度であるとすれば、4000ポイントを下回ったからといって、政府が「救市」(市場を買い支える)に乗り出すことは株式バブルを救うだけで、持続不可能である。政府の役割は株式市場を直接買い支えることではなく、市場経済の制度改革を急ぐことである。もっとも愚かなやり方は、陰謀説を唱え、犯人らしきものを捕らえることである。その犯人を処分したところで株価はさらに下落してしまうおそれがある。

中国の指導者と政策担当者は市場経済における市場の特性を十分に理解していない。彼らの脳裏では、市場はコントロールされなければならないと考えられている。しかし、市場は多数の参加者が取引する場であり、政府によってコントロールされるものではない。市場がコントロールされると、その時点で市場が破たんしてしまう。市場は明確なルールのもとで運営され、すべての参加者はそれに則って取引を行わなければならない。中国の株式市場に欠陥があるとすれば、最大の欠陥はルールがきちんと守られないことで、インサイダー取引などが横行していることである。

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