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第14回 中国経済はソフトランディングできるのか(9月11日)

10年前から世界経済が中国経済によって牽引されているといわれているが、それが事実であるとすれば、中国経済の減速は自ずと世界経済の足を引っ張ることになる。今は、世界経済は中国経済に大きく依存している。この3か月、世界経済は中国の景気動向、上海の株価と人民元の為替レートによって一喜一憂してきた。主要国の株価は上海の株価の動きと連動して大きく変動している。

中国経済と世界経済の連動性は国際貿易、中国企業と中国政府の対外投資、中国人観光客の消費ブームなどによって形成されている。世界は中国経済のさらなる成長を期待しており、同時に、中国経済の減速を心配している。実は、中国自身も景気減速を懸念している。

中国政府は2015年の経済成長率について7%を目標に掲げている。中国経済の実力からすれば、7%成長を実現するのは不可能ではない。中国経済のファンダメンタルズが急変しておらず、順調にいけば、7%成長を実現できる。しかし、最近の中国経済の内実を考察すると、明らかに変調し、7%成長を本当に実現できるのかは定かではない。

世界二番目の規模を誇る中国経済は無理に高成長を目指す必要もなければ、そうすべきではない。李克強首相が述べたとおり、中国は量的拡大よりも質的向上を目指さなければならない。問題はどのようにして、高品質の経済成長を実現するのかである。

そもそも高品質の経済成長はどのようなものだろうか。

少なくとも経済成長は環境汚染を伴ってはならない。これまでの経済成長は環境を犠牲にしてきた側面がある。そして、経済成長の果実をすべての国民は享受できるようにしなければならない。しかし、この35年間の「改革・開放」政策の経済発展は所得格差の拡大という負の遺産を残している。所得格差の拡大は社会不安の増幅を意味する。

生態環境が一旦破壊されてしまえば、再生するには想像を絶するほど時間がかかる。否、そもそも環境が再生しないかもしれない。そして、格差の拡大も改善しにくい。とくに、中国の場合、所得分配はきわめて不公平な仕組みによるものであり、簡単には格差が縮小しない。

これからの中国の進路を展望すれば、中国共産党は一党独裁の政治体制を放棄する可能性はほぼない。独裁政治に由来する問題は中国社会と経済の歪みをもたらしている。たとえば、自由な市場経済には、機能的なガバナンス制度は必要不可欠である。しかし、独裁政治においてガバナンスは機能しない。

結論をいえば、政治改革を断行しなければ、中国経済が質的向上を実現する可能性は低い。足元の中国経済について、バブルが崩壊しつつあるという観点からすでにハードランディングしているといえる。むろん、これで中国経済が経済危機に陥ることを必ずしも意味しない。なぜならば、リスクが危機に発展するかどうかについては、そのコストを速やかに払って穴埋めするかどうかによる。

中国は、経済構造的に種々の問題を抱えているが、国民の同意を得ずに、経済運営の失敗を財政資金の投入によって穴埋めすることができる。その結果、一部のセクターまたは一部の国民の利益が犠牲にされるが、国全体は危機から免れる。むろん、問題が解決されるというわけではない。問題が蓄積され、さらに深刻化するだけである。

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