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第15回 輸出の落ち込み 景気回復の障害(11月13日)

先日の共産党中央委員会の5中全会で習近平国家主席はこれからの経済成長率目標として6.5%の成長を死守しなければならないと強調した。しかし、6.5%の成長を持続できるかどうかは依然として不透明である。中国海関総署の発表によれば、2015年10月の国際貿易は大きな落ち込みとなり、うち、輸出は前年同期比6.5%減少し、輸入は同18.8%も落ち込んだ。

国際貿易が落ち込んでいる原因は外需が弱いというよりも、中国の輸出製造業の国際競争力が低下していることがある。というのは、最低賃金の改定に伴う人件費の上昇と過去10年間の人民元の切り上げが輸出製造業の価格競争力の低下をもたらしているからである。本来ならば、中国企業は価格競争力の低下を補うために、技術競争力を高めないといけないが、イノベーションに取り組む姿勢が弱いため、技術競争力が十分に強化されていない。

とくに、輸出よりも輸入のほうが大きな落ち込みとなっているのは、中国の貿易構造と関係している。すなわち、原材料と部品を輸入して、中国でそれを組み立てて完成品を輸出するのは国際貿易の基本的な姿である。しかし、輸出が難しくなると思われていることから企業は原材料と部品の輸入を減らしている。すなわち、輸入は輸出に先行して減少するのである。

ただし、輸出が減少しているからといってアパレルなどの低付加価値製造業を保護する政策をとるべきではないと思われる。中国が直面しているのは産業構造の高度化のプロセスである。仮に低付加価値製造業を温存しようとするならば、それこそ本末転倒な考えである。重要なのは、イノベーションに取り組む努力である。
 
むろん、国際貿易が大きく落ち込む以上、中国にとっての交易条件が悪化していると考えられる。それを受けて人民元の為替レートが切り下がるはずであるが、人民銀行(中央銀行)は為替レートをコントロールしているため、為替レートの調節機能が十分に果たされていない。輸出ドライブをかけるために、人民銀行は元安誘導をしたいはずだが、なぜ元の切り下げを実施しないのだろうか。

実は、過去10年間、元が切り上がるなかで巨額のホットマネーが中国に流れた。ここに来てドルの利上げと中国の景気減速により、ホットマネーが海外へ流れ出している。ここで大幅な切り下げを実施すると、資本逃避を本格化させる恐れがある。人民銀行は資本逃避の本格化による通貨危機を回避するために、人民元の切り下げを実施していない。

一人当たりGDPが8000ドルに達している中国では、アパレルや靴といった低付加価値製造業の輸出は難しくなる。これらの企業は相次いでベトナムやミャンマーなど人件費の安い国へ移転している。このような産業移転は雁行発展モデルの観点からみれば、きわめて自然な姿といえる。

中国は産業構造高度化のプロセスにあるが、ローエンドの輸出製造業を移出させ、ミドルエンドとハイエンドの輸出製造業へシフトしていくべきである。このプロセスは「騰籠換鳥」、すなわち、鳥かごのなかの鳥を取り換えると表現されている。問題は今までの鳥は徐々にほかへ飛んでいっているが、新たな鳥はまだ飛んできていないことだ。中国政府としての役割は、ミドルエンドとハイエンドの産業が育つように市場環境を整備することである。たとえば、知的財産権の保護を強化し、イノベーションを促進することである。

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