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第17回 株価急落、急がれるファンダメンタルズの改善(1月20日)

新年早々、上海株式市場の株価指数は急落し、中国経済にとり波乱の幕開けとなった。証券当局は昨年来の株価急落について、制度面の問題により投資家のパニック売りが助長されているとみているようだ。今年に入って、株価が大きく変動する際、取引を停止できるサーキットブレーカーのメカニズムが導入された。

サーキットブレーカーは使用電気の量が電気メーターの限度を超えた場合、ブレーカーが落ちる仕組みと同じ考えで、株価指数は事前に設定されている制限値幅に到達したとき、取引が自動的に停止するメカニズムである。具体的に、中国が導入したサーキットブレーカーは株価のCSI指数が上下5%に達したとき、取引が15分間停止する。その変動幅が7%に達したとき、取引が完全に終了し、再開されない。

証券当局がサーキットブレーカーを導入したのは投資家のパニック売りを阻止しようとしたはずである。しかし、このメカニズムが導入されてわずか四日間のうち、二日間も発動した。明らかにサーキットブレーカーの導入は逆効果だった。それを受け、証券当局はサーキットブレーカーの一時停止を発表した。

今回の騒ぎについて少なくとも二つの反省点がある。一つは経済のファンダメンタルズが改善しなければ、株価対策を講じても市況が好転しない。もう一つはサーキットブレーカーの導入を決めた証券当局が市場の特性を十分に理解していない。

最初のポイントについて言えば、景気が減速し、上場企業の業績が芳しくない中で株価がどうして上昇するのだろうか。2015年、株価が大きく下げたが、上場企業の収益性から考えれば、今の株価は依然割高の水準にある。証券当局は株価がこれ以上下がらないようにあの手この手対策を講じるが、経済のファンダメンタルズが改善されないまま、株価を割高の水準に維持しようとする考えはそもそも愚かである。

サーキットブレーカーは投資家のパニック売りを防ぐための有効手段だが、7%の変動幅で取引が停止してしまう設定では、却って投資家のパニック売りを誘う嫌いがある。サーキットブレーカーが果たすべき役割はいわば防波堤である。低すぎる防波堤は波の拡大を助長することがある。

そもそも、株式市場は家計の貯蓄を投資対象の企業に金融仲介する機能を有する。株価の上昇は上場企業の利益の上に成り立つものである。ただし、短期的な株式の売買と株価の変動はゼロサムゲームであり、投資家の間で資産の再配分が行われるだけである。株式投資がプラスサムゲームになるには、投資家が上場企業に対するコーポレートガバナンスを強化し、その収益性を向上させることが重要である。

したがって、健全な株式市場では、必ずや投資家が上場企業の情報開示を信頼し、証券監督当局が信用されなければならない。中国の株式市場がパニックに陥りやすい背景には、上場企業の情報開示が信用されていないうえ、証券当局に対する信頼も崩れていることがある。

結論をいえば、新年早々の株価の急落はサーキットブレーカーが導入されたからではなく、割高の株価が下落するのは当然の動きであるということだ。証券当局は大口株主による株式の売却を禁止する措置をとっているが、これも逆効果である。なぜならば、売却が禁止されているため、買い増しの需要も生まれにくい。証券当局はもう少し謙虚な気持ちで市場の特性を理解すべきである。

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