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第19回 中国経済はなぜ減速するようになったか(5月6日)

中国経済はなぜ減速するようになったか、という設問に答える前に、まず、中国経済がなぜ成長できたか、という設問に答えないといけない。毛沢東の時代(1949-76年)、中国経済はほとんど成長しなかった。その原因は端的にいえば、政府による統制が強すぎたので、活力が完全に消されたためである。鄧小平は「改革・開放」政策を推し進め、経済が自由化されたために、中国経済はキャッチアップできた。

振り返れば、1970年代、農産物や消費財などの生活必需品が極端に不足していたにもかかわらず、農民は自分の庭で作った野菜を都市部へ持ち込んで売ると、資本主義といって拘束され、野菜なども没収された。自由がなければ、経済は活性化しない。鄧小平は中国の人民にある程度の自由を求めた。むろん、その自由は限られたものである。すなわち、鄧小平は中国の人民に、政治に関する自由を与えなかった。

中国研究の一つの命題は自由な市場経済と専制政治がなぜ共存できたかである。本来ならば、自由を前提とする市場経済は必ずや民主主義の政治体制とペアとなってはじめて機能するものと思われている。しかし、完全に束縛されていた経済が限定的な自由を得るだけで短期的にエネルギーを発揮することがある。しかも、経済をどん底にまで陥れた政府は短期的に経済を発展させることで目的が一致する。

問題なのは、経済がキャッチアップし、富がかなり蓄積されてから、政府の本心が現れてくることである。すなわち、富の分配において政府は市場メカニズムに任せることを考えない。市場経済の原則は働く者が報われることである。しかし、中国において富の分配は権力を軸にして行われている。権力の中心に近いものほどたくさんの富を得ることができる。このことは腐敗とも関連する動きである。

専制政治は経済の自由化を必ずや妨げてしまう。専制政治は独断に政治権力を分配する。権力者はより多くの富を勝ち取ることができる。自由が束縛されれば、経済はおのずと活力を失ってしまう。実は、経済が持続的に発展するかどうかは資源の配置が公平に行われているかどうかにかかっている。

中国では、国有銀行と国有企業は大半の資源を支配している。それに対して、民営企業はもっとも多くの雇用を創出し、GDPへの寄与度も国有セクターを凌駕しているが、勝ち取る資源は3分の1程度にとどまる。中国経済は鄧小平がグランドデザインした自由化の路線を歩み続けるか、統制経済に逆戻りするかの選択を迫られている。

3年前に、李克強首相はderegulation(規制緩和)の推進を公約した。しかし、地方政府は規制緩和に協力的ではない。政府部門による経済への関与はさらに強化されている。これこそ中国経済が減速した真の原因なのである。

資源の配置と富の分配はいずれも政府に依存する状況下で合理化する見込みはほとんどない。中国経済の減速はファンダメンタルズの悪化によるものではなく、政府による経済活動への関与の活発化によるものである。

中国は持続的な経済発展を実現するには、時間がかかるにしても、国有セクターの民営化を目標に掲げるべきである。政府機能は、経済を管理する役割から行政サービスを提供する役割に変身する必要がある。こうしてみれば、中国の市場経済化の改革は今までの35年間、ほんの一歩しか踏み出していないことが分かる。

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