本文へ

バナーエリアへ

フッターへ



Home  > 連載・中国展望 (特任教授 柯隆)  > 2016年  > 第23回 G20の役割の再考(8月25日)

第23回 G20の役割の再考(8月25日)

まもなく中国の杭州市でG20首脳会合が開かれる。これに先立ち、日本の伊勢志摩でG7首脳会合が開かれた。G7の共同文書において、世界経済に関する認識が再確認され、経済危機の芽を摘むために、みんなで積極的な財政政策を実施することで合意したといわれている。しかし、それ以降、実際に積極的な成長戦略を実施しているのは日本のみである。伊勢志摩サミットは7か国首脳のパーティだったといっても過言ではない。

今度、G20が開催されるが、それに何が期待されているのだろうか。主催国の中国にとり、G20の開催で自らを世界のリーダーとして演出していきたいはずである。かつて、2009年ピッツバーグで開かれたG20サミットで胡錦濤国家主席は4兆元(当時の為替レートでは約56兆円)の財政出動を表明し、世界のリーダーから称賛された。2009年はリーマンショックがあった年で世界経済が危機に直面していた。

危機に対処する中国の取り組みが世界で評価されたが、その政策について賛否両論がある。その一つに4兆元に上る拙速な財政出動が行われたから、今、世界で起きている過剰設備の問題が生じたという説がある。2009年から2013年まで中国で不動産バブルが再燃したが、その一因は財政資金の一部が国有企業を経由して不動産市場に流れたことにある。不動産バブルは鉄鋼、アルミ、板ガラス、セメントといった素材産業の過剰投資を引き起こした。

今回のG20でも、中国からのさらなるプレゼントが期待されている。中国は責任のある大国であり、世界経済を救うのは中国のみであるといった感情論がある。むろん、今の中国は2009年のときと違って、財政的に余裕がない。過剰設備と過剰債務を処理しないといけない。中国は世界経済を救うどころか、自らがどうなるかわからない状況にある。

あらためてG20のようなサミットの役割を検討することにする。世界にはG7やAPECをはじめとする多数のサミットが存在する。その多くが形骸化し、首脳たちのパーティになっている。そのなかでも、G20は参加国が多く、一つのことについてコンセンサスを得ることが難しい。

しかし、今の世界経済を鳥瞰すれば、ある一国が世界経済を救うのは不可能である。国際協調こそ世界経済を持続的な成長に導く唯一の方法である。また、国際経済に関する新たなルール作りは重要である。市場が日々変化している。古いルールは新しい市場環境に適応できないものが現れている。こうしたルール作りこそG20の役割である。

今の世界経済を考察すればわかるように、主要国は景気を押し上げるために、ありえないほどの流動性を金融市場に注ぎ込んでいる。過剰流動性は国際的な投機を助長する可能性が高い。金融取引を監視する国際的なルール作りが求められている。各国の監督当局の間でその情報を共有する必要がある。実は、こうした努力がほとんどなされていない。

現在の金融取引は情報のネットワークに乗じて予想できないほどのスピードでその取引が行われている。ヘッジファンドなどの投機筋にとりまさに金融投機の黄金時代である。そもそも金融市場の役割は貯蓄主体の家計から投資主体の企業への金融仲介である。しかし、超低金利の時代、とくに一部の先進国では、マイナス金利が導入され、そのうえ、投機が横行し、結果的に、格差が急速に拡大している。G7サミットで取り上げなかったグローバルの格差問題およびタックスヘイブンを利用したマネーロンダリングの問題を議論するのがG20の役割ではなかろうか。

Copyright © Global Center for Asian and Regional Research, University of Shizuoka All Rights Reserved.