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第25回 6.5%の経済成長目標の意味(3月9日)

北京で年に一度の全国人民代表大会が開かれている。李克強首相は、政府活動報告のなかで6.5%前後の成長を2017年の経済成長目標として掲げることを発表した。2016年の実質経済成長率は6.7%だったため、それよりも低い成長率になる。専門家の間で、この6.5%成長の目標は中国経済の構造転換が遅れているから、減速がまだ続いていると分析される一方、無理に高成長を目指すと、資源効率が悪いため、逆効果というだけでなく、環境負荷も高まるとの指摘もある。すなわち、6.5%の経済成長は中国経済の実力相応のレベルであると評価されている。

確かに、2017年は中国の政治の年であり、ここで無理にリスクを取って高成長を目指すべきではない。ただし、成長率の目標を引き下げるからといって、構造転換が自ずと進むとは限らない。経済成長が減速しても、構造転換が進まない可能性が高い。

李克強首相が行った政府活動報告を読めばわかるように、中国政府は経済構造に潜んでいるリスクをすでに認識していることがわかる。これまでの4年間、中国政府は反腐敗に全力を尽くしてきたが、経済改革のビジョンはあいまいなままである。たとえば、国有企業を改革しなければならないが、どのように改革するかについて明らかになっていない。

そもそも国有企業の問題はその所有制にあり、コーポレートガバナンスが確立していないから、経営が改善されない。目下、中国経済の足を引っ張っている過剰設備の問題は基本的に国有企業に原因がある。なぜならば、民営企業が過剰設備を抱えれば、早晩倒産してしまうからである。国有企業は中央政府または地方政府に帰属しているため、過剰設備を抱え、経営が悪化しても、政府が保護してくれると期待する。いわゆるモラルハザードが横行している。

国有銀行の経営をみても、同じである。国有銀行は民営企業に融資する際、必ずや担保を差し出すように民営企業に求める。したがって、民営企業の借り入れは不良債権になる可能性が低い。それに対して、国有企業は国有銀行から借り入れたお金をずさんな投資に使うなど不良債権になる可能性が高い。この体質は一貫して改善されていない。

中国経済の問題は生産段階の問題だけではない。国民の納税意識が極端に低く、その結果、政府の財源は不足しがちになっている。中国人はなぜ納税意識が高まらないのだろうか。本来ならば、納税は国民の義務である。国民はその義務を果たす代わりに、行政サービスを享受できるはずである。ところが、中国には「官本位」という言葉がある。それは政府幹部と役所がすべてにおいて優先にされるという意味である。

たとえば、役所へ何かを手続きをしにいくときに、すんなりやってくれないことが多い。結局、何か手続きをしたいときは、裏の人脈を頼りにせざるを得ない。そのため、国民は行政サービスを享受している実感がそれほどない。さらに、政府は国民から徴収した税金を何に使っているかを十分に開示していない。これでは、国民の納税意識が高まらない。

市場経済における租税制度のもう一つの役割は、富の再分配によって所得格差を縮小することにある。中国では、富裕層は脱税や節税などあの手この手で納税を免れようとする。その結果、富裕層はますます金持ちになり、貧困層との格差が拡大する一方である。全人代は、これからの1年の経済政策だけでなく、どのような国造りをしていくかについてフランクに議論すべきである。

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