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地震予知部門の新設 ~「ふじのくに」の大地の動きを把握し見通しを立てる~(特任准教授 楠城 一嘉)




5月23日 特任准教授 楠城 一嘉
「ふじのくに」静岡県はその名の通り富士山があり、また駿河湾をはじめとする自然が豊かで風光明媚な県である。自然の恵みである山海の幸や温泉、更に世界遺産「富士山―信仰の対象と芸術の源泉」は本県の誇りである。

その自然は、静岡県のある大陸プレートとフィリピン海プレートが衝突する地殻変動で出来たことは県民にとっては周知の事実であろう。その地殻変動の産物を利用して上記のような文化的・経済的価値を生み出しつつも、もう一つの産物である富士山噴火や相模トラフと南海・駿河トラフで発生する巨大地震・大津波のリスクと共生していることは、本県の大きな特徴である。この特徴に応じて、人々は暮らし方の知恵を蓄えた結果、県民を挙げて防災対策を徹底する挑戦が始まった。

例えば、地震・津波の場合、本県は社会環境の変化や地震災害に関する科学的な知見の蓄積などに応じて、地震被害想定を改定してきた。現行の静岡県第4次地震被害想定では、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の教訓を取り込んでいることが特徴である。さらに、建物の耐震化の促進、津波からの避難の迅速化、地震予知といった対策の実施による被害軽減効果が推定されている。どれも効果は大きいが、この中で最も対策実施が難しいのは地震予知であろう。つまり、地震予知を目指す研究は未だ発展途上なのである。しかし、地震直前の前兆現象の仕組みが明らかになれば、地震予報の形で国や県の業務の中に取り入れることができるはずなので、その実現のための研究を根気強く進める必要がある。被害想定に基づいた対策は進めつつ、国や県が指摘するように、地震予測(予知)は、地震・津波から人命を救う上で重要な技術であり、今後とも研究を進める必要がある。

そこで今年度グローバル地域センターは、静岡県の要請を受けて、「地震予知」部門を新設した。その部門は、本県の被害軽減のために地震の予知の精度高める目的を持って幅広い分野の研究を行う。特に我々に課せられていることは、現在、静岡県の地下で何が起きているのか、ひいては地球で何が起きているのかを把握し、将来の地殻変動や地震活動に見通しをつけることである。現在本部門では、相模トラフと南海・駿河トラフで発生する将来の巨大地震へ活かすために、先月起きた2016年熊本地震の前兆現象の仕組みを明らかにする研究を開始した。

併せて本部門では、火山噴火や津波研究を実施し、防災施策への提言や防災知識の普及を図っていく。例えば、将来の静岡県を担う県立大生に対する授業や一般向の社会教育では、地震や津波・火山、そして防災に対して正しい知識を分かってもらうことに主眼を置く。その理由は、最新の地震学・火山学に基づき正しく自然現象を理解する学生や県民が一人でも多くなることが災害軽減の基本と考えているからである。日本や世界で起きた自然災害を教訓として、「ふじのくに」の大地を考えることが大切であり、文化的・経済的活動を安全に行うことが大切である。本部門は、そのために必要な地震予知を目指す研究や火山・津波防災に資する科学的研究を実施し、静岡県の更なる発展に貢献していきたい。