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県大らしいSDGs どう実践する?(特任准教授 楠城一嘉)


5月25日 特任准教授 楠城一嘉
SDGs (Sustainable Development Goals: 持続可能な開発目標)は、2015 年の国連サミットで採択された、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた17個の目標です(この目標について、前回のリレーコラム1)に解説があります)。これらの目標は2030年にあるべき姿を表していますが、かなり漠然としているので、具体的目標が必要です。そこで、169のターゲットで具体的な目標が示されており、その目標の達成度を測るために、232の指標が設けられています。SDGsがパワフルなところは、この指標を使って、数値目標を定期的にモニタリングしていく事にあります。

例えば、目標4の「世界の全ての人々が、質の高い教育を受ける事が出来る状況にある。」には、10個のターゲットと11個の指標があります。具体的に、1番目のターゲットは「2030年までに、全ての子どもが男女の区別なく、適切かつ有効な学習成果をもたらす、自由かつ公平で質の高い初等教育及び中等教育を修了出来るようにする。」です。そして、このターゲットに対する指標は1つあり、それは「(i)読解力、(ii)算数について、最低限の習熟度に達している次の子供や若者の割合(性別ごと) (a) 2~3学年時、(b)小学校修了時、(c)中学校修了時」です。この例のターゲットに、「初等教育及び中等教育を修了出来る様にする」とありますが、義務教育がある日本ではあまり関係無さそうです。しかし、SDGsのターゲットや指標はグローバルな視点で作られているので、それを国や地域レベルに置き換えるローカル化する事が出来ると考えられています。先ほど例示した指標を、日本の指標に置き換える場合の案として、小中学校登校者割合が挙げられます2)。これは小中学校登校者数(=小中学校在学者数-不登校者数)を小中学校在学者数で割った値です。この割合であれば、日本でも不登校問題があるので、関係がある事になります。このように、ローカル化する事を知っていれば、何をやれば良いか分からない傍観の立場から、自分の生活環境から何か出来るのではと考えられそうです。

では、静岡県立大学(以下、県大)らしいSDGsへ向けてどの様に実践すれば良いでしょう?2019年11月に「静岡県立大学 SDGs宣言」3)をして、全学的な取組みをはじめており、優先課題を設定し、出来る事からはじめています。しかし、それで終わりではありません。出来る事からやって、もっとやる事が重要なのです。その道筋は、バックキャストで2030年の理想の未来について考え、未来を実現するために必要な行動を実践する事です。その流れをサポートするために、ターゲットや指標を県大用に置き換えるローカル化をし、数値目標を定期的にモニタリングする仕組み作りをするのが大事です。また、2030年に働き盛りになる今の県大生を、当事者となる前提でこの作業に参加してもらうのはどうでしょう。当事者のいないルール作りほど虚しいものは無いですから。

また、県大のローカル化で考慮すべき事は、南海トラフ地震4)です。昭和の東南海・南海地震が起きてから既に75年程度経過しており、トラフ沿いの大地震の発生間隔が100-200年である事を考えると、2030年頃は、南海トラフにおける次の大地震発生の可能性が非常に高まっている時期、もしくは、既に起きた後の時期です。南海トラフ地震に備える防災研究・教育が盛んになり、南海トラフ地震後の未来の静岡について考える力をつけられるようなSDGsへ向けた実践が、県大の課題ではないでしょうか。グローバル地域センターの地震予知部門は、このベースとなり得る防災研究・教育を実施しており5)、これからも深めていく予定ですので、県大のSDGsに向けた取組みを積極的に進めていきます。また、同部門は、SDGsと防災を県民の皆様と一緒に学び考えるワークショップ等も計画していますので、乞うご期待ください。

リンク 【※ 1)以外は外部サイトにリンク】
1) https://www.global-center.jp/review/column/2021/20210405/
2) https://sdgs.city.sagamihara.kanagawa.jp/169-target/
3) https://www.u-shizuoka-ken.ac.jp/guide/sdgs/declaration/
4) https://www.jishin.go.jp/regional_seismicity/rs_kaiko/k_nankai/
5) https://www.u-shizuoka-ken.ac.jp/news/20200617-1/,
https://www.u-shizuoka-ken.ac.jp/news/20190905/,
https://www.u-shizuoka-ken.ac.jp/news/20190626-1/,
https://www.u-shizuoka-ken.ac.jp/news/20180316/