11月分
ニュース:米カリフォルニア州の林野火災、死者数過去最多に
11月8日に発火した、カリフォルニア州北部ビュート郡パラダイス等のキャンプ火災とロサンゼルス西方のウールジー火災は19日までに死者80人、行方不明者約1000人、避難者5万2000人以上を出している。キャンプ火災はカリフォルニア州史上もっとも死者と被災建物の多い林野火災となった。キャンプ火災の約250キロ南南西のサンフランシスコでは16日、火災の煙による大気汚染のため、公立学校は休校となり、市当局は住民に窓を閉めて屋内に止まるよう促した。20日夜にはキャンプ火災の現場一帯に雨の予報が出ており、焼け落ちた木や家屋の残骸を含む泥流によって、新たな被害が懸念される。パラダイス周辺では林野火災の避難計画も演習も行われていたが、2万6000人まで増えた人口に避難計画が対応しておらず、全住民を数時間以内に避難させることは不可能だったと指摘されている。燃えやすい林野の中に住宅が建てられた一方で、温暖化のため林野火災が増えており、対策が急がれる。(2018年11月19日)
ニュース:英、ホリデーシーズンの不測事態に備え呼びかけ
英国各地の警察のテロ対策責任者は、クリスマスのショッピングシーズンに備えて、商店・事業所に対し、緊急時の計画を立てるよう呼びかけている。テロ発生時に短時間で事態に対応できるよう、「60秒セキュリティ・チェックリスト」を従業員に配布し、緊急計画の責任者は誰か、店内の客をいつ避難させるか、建物を封鎖すべき状況、客に屋内待機を呼びかける状況といった、不測の事態への対応を全従業員に周知すること、店内で身を隠すのに適した場所を店員が知っておくことなどを指導している。(2018年11月18日)
ニュース:米サイバーセキュリティおよびインフラ・セキュリティ局が発足
米議会が10月3日に可決したサイバーセキュリティおよびインフラ・セキュリティ局(CISA)設置法は11月16日、トランプ大統領の署名を得て発効した。国土安全保障省の全国保護およびプログラム部(NPPD)を同省の新たな局として再編し、米国のサイバーおよびインフラ全般のセキュリティの中心的役割を担わせることが目的。CISAはサイバー攻撃に対して他の政府機関や民間セクターと協力して、電力網、銀行、電気通信など米国の経済活動を支える重要インフラを守ることになる。(2018年11月16日)
ニュース:ボーイング機墜落事故―設計ミスを調査
インドネシアのジャカルタ沖で10月29日にボーイング737 MAX 8型機(ライオン・エア610便)が墜落し、乗客・乗員189名が全員死亡した事故について、米連邦航空局(FAA)は11月7日、機体の設計ミスの修正をボーイングに要求することを検討中だと明らかにした。同機種の失速防止システム(MCAS)は、機首の気流によって迎角を測り、迎角が大きすぎると尾翼を動かして機首を下げるが、事故機は気流の誤計測のため機首を押し下げられて墜落した可能性がすでに明らかになっている。シアトル・タイムズ紙が報じた。(2018年11月15日)
ニュース:ハリケーン大型化に都市化と温暖化が影響か
昨年の米国における大型ハリケーンの被害と、都市化および温暖化の関連性に着目した研究2件がネイチャー誌に掲載された。まず、アイオワ大学とプリンストン大学の研究者は、ハリケーン・ハーヴィーのテキサス州ヒューストン市への影響を精査し、高層ビルによって空気が上空に押し上げられたことがより多くの降雨をもたらし、水を吸収する土壌や植物が少なく道路が舗装されていることによって、洪水のリスクが21倍も上がったと計算した。また、ローレンス・バークレー国立研究所の研究者は、昨年のハリケーン・マリアおよびイルマ、2005年のハリケーン・カトリーナについて、地球温暖化がなかった場合の被害のコンピュータ・シミュレーションを行った。この研究では、温暖化によって降雨量は劇的に増加しているものの、風速はさほど影響を受けていないという結果が得られたという。(2018年11月14日)
ニュース:2017年の米国のヘイトクライムは前年比17%増
FBI(連邦捜査局)は2017年版ヘイトクライム統計報告書を公表し、FBIに2017年に報告されたヘイトクライム(特定の属性をもつ個人または集団に対する偏見や憎悪を原因とする暴行等の犯罪)の件数が前年比で17パーセント増えたと明らかにした。一種類の属性に対する偏見・憎悪を動機とする犯罪について、属性の種類を多い順に挙げると、人種・民族58パーセント、宗教22パーセント、性的志向16パーセント等となる。もっとも、件数が増加したのはFBIに報告されるヘイトクライムの割合が上がったからかもしれないし、米司法統計局は2007-11年に行った調査で、FBIに報告されていないヘイトクライムが年間約26万件あると結論している。(2018年11月14日)
ニュース:米は軍事的優位をかなり失っている―国防戦略委員会
米国は中国やロシアに対する軍事的優位をかなり失っており、とくに複数の紛争に同時に直面する事態になれば、「国家安全保障の危機」に陥りかねないと、米議会の要請によって国防総省の国防戦略(2018年1月)を検証した国防戦略委員会が報告した。同委員会が14日に発表した報告書『共同防衛の準備のために(Providing for the Common Defense)』は、米国は次の武力紛争で受け入れがたいほど多くの死傷者と資産の喪失を味わうことになるかもしれないと警告している。(2018年11月14日)
ニュース:米CDC、インフルエンザ大流行を警戒
世界で5000万人から1億人の命を奪ったとされるインフルエンザの大流行「スペイン風邪」の100周年を機に、FEMA(米連邦緊急事態管理庁)の緊急事態管理研修所(EMI)と米国疾病予防管理センター(CDC)は、新種のインフルエンザウイルスの公衆衛生に対する影響等に関する仮想机上演習を共同で実施する。米東部時間の12月4日、5日、6日の正午から4時間、同じ内容の演習を予定しており、公衆衛生に関わる緊急事態に対応する必要のある官民の人々に、いずれかに参加するよう促している。これに先立ちCDCのレッドフィールド長官がCBSテレビのインタビューで、昨今の最大の懸念としてインフルエンザの大流行を挙げた。昨年、米国ではインフルエンザ罹患の記録が始まって以来、最悪の数の死者を出し、CDCはインフルエンザに対する警戒を強めている。(2018年11月14日)
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ニュース:米国の国家安全保障担当大統領次席補佐官、更迭
14日、ミラ・リカーデル国家安全保障担当大統領次席補佐官の更迭が発表された。更迭を発表したサンダース報道官によると、政権内の別のポストに再配属される予定だという。リカーデル氏は5月のボルトン大統領補佐官就任時に次席補佐官に就任したが、10月のアフリカ訪問時にメラニア大統領夫人との衝突が報じられていた。(2018年11月14日)
ニュース:コンゴ民主共和国のエボラ出血熱流行が拡大
コンゴ民主共和国東部の北キブ州とイトウリ州で流行しているエボラ出血熱は収まりを見せる様子がなく、8月以降の死者は201人、感染者は、感染疑い症例を含め320人に上るという。現地では内戦が続いており、100万人以上が国内避難民となっているうえに、医療関係者が襲撃されたりする事件が起きていることも、流行を食い止めることを困難にしている。(2018年11月11日)
ニュース:ロサンゼルス郊外のバーで銃撃、12名死亡
7日深夜、ロサンゼルス郊外のサウザンドオークスの、大学生や地元の若者に人気があるバーで、男が45口径のグロック21自動式拳銃で警備員、店員、客を射殺し、通報を受けて現場に最初に駆け付けた保安官を含む12人が死亡した。犯人も現場で殺害された。(2018年11月8日)
ニュース:米国土安全保障省の重要インフラ保護担当次官補を任命
トランプ米大統領は、国土安全保障省の重要インフラ保護担当次官補にブライアン・ハレル氏を指名した。ハレル氏はデューク・エナジー社のセキュリティ責任者を務めており、それ以前は重要インフラ防護のコンサルタントや、北米電力信頼度協議会(NERC)の重要インフラ保護事業のディレクターを務めていた。(2018年11月6日)
ニュース:インサイダー脅威対策の枠組
米国家情報長官府とFBI(連邦捜査局)が共同で運営している全米インサイダー脅威タスクフォース(NITTF)が、「インサイダー脅威プログラム成熟度枠組」を公表した。2012年11月に大統領府がインサイダー脅威に対する最低基準を示した文書を発表しているが、今回の枠組はより包括的、積極的に脅威に取り組み、リスクを防止、検知、減少させるため、最低基準内の主要要素に基づいて、インサイダー脅威プログラムの機能性を高める方法を記述している。(2018年11月5日)
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ニュース:米国土安全保障省が過激思想対策補助金を打ち切る
米国土安全保障省は、人はテロリストになる過程で「過激化」の兆候を示すという前提で、そうした兆候を示した人を発見して対策を講じるための「過激思想対策(CVE)」の補助金を、2014年から自治体警察などに合計1000万ドル与えてきた。トランプ政権はこのほどCVE補助金を打ち切ったが、その直前にピッツバーグのユダヤ教礼拝堂銃撃事件が起きたので、CVE補助金の打ち切りが、極右テロリズムを軽視する政権の姿勢を示しているという批判もある。しかしながら、オバマ政権以来、CVE補助金のほとんどは米国人イスラム教徒の過激化を防止する事業に与えられているうえに、テロを減らす効果を実証していない。(2018年11月3日)
ニュース:NOAA、新型気象レーダーを公表
米国海洋大気庁(NOAA)の暴風雨研究所は、実物大の気象レーダーとして設計・製造された初めてのSバンド二重偏波フェーズド・アレイ・レーダーである先進技術実証機(ATD)を、オクラホマ州ノーマンの国家気象レーダー試験台に設置した。2019年から運用する。製造費は3800万ドル(43億円)。フェーズド・アレイ・レーダーは、平面上の多数の小さなアンテナのそれぞれに電波送受信機を実装しているので、アンテナを動かさずにビームを上下左右に動かすことができる。NOAAの暴風雨研究所は2003年から16年まで、米海軍のイージス艦のために製造されたSPY-1Aレーダーを使用して、気象観測におけるフェーズド・アレイ・レーダーの有効性を評価していた。(2018年11月3日)
ニュース:米ユダヤ教礼拝所で銃撃、11人死亡
27日朝、米ペンシルバニア州ピッツバーグのユダヤ教の礼拝所(シナゴーグ)で男が半自動小銃と自動式拳銃を乱射、11人が死亡、6人が負傷した。犯人は通報を受けて現場に駆け付けた警官にも発砲し、銃撃戦の末、負傷して拘束された。犯人は極右に寛容なソーシャルメディアGabに反ユダヤ的な内容を頻繁に投稿しており、逮捕時もユダヤ人の排斥・虐殺を主張した。(2018年10月28日)
ニュース:民主党関係者宛に爆発物
トランプ大統領に批判的なことで知られる民主党の政治家や報道関係者宛に10月24日以降、相次いで爆発物が送り付けられた。送付先にはオバマ元大統領、クリントン元上院議員、ブレナン元CIA長官、俳優のロバート・デニーロ氏やCNNニューヨーク支局などが含まれていた。26日、米司法当局は容疑者としてフロリダ州在住の男性を逮捕した。容疑者はツイッター上でトランプ大統領への支持や民主党に対する中傷をたびたび投稿しており、そうした内容の紙やシールを多数貼ったバンの車内で生活していた。(2018年10月27日)
技術研究情報:災害後の橋の強度を評価―ソイル・プローブ
米国土安全保障省科学技術部局では、大雨の後に土壌の浸食具合をテストし、橋の強度を確認するための軽量なツール「ソイル・プローブ」を開発した。プローブ、橋梁の周辺の土壌をかき分けてプローブを地中に沈めるためのシリンダー、汲み上げポンプから構成され、ポンプは蓄電池で動く。大雨の後は通常、橋桁は周りの土壌が洗い流され、新たに堆積した土砂に囲まれているが、新たに移動してきた土砂には橋桁を支える十分な密度がない。そのため、橋が災害後も設計どおりの積載量を支えられるのか、速やかに確認することが重要となる。(2018年11月13日)掲載元へのリンク
技術研究情報:米国土安全保障省、洪水センサー3種を新たに導入
米国土安全保障省科学技術部局は洪水被害をできるだけ減らすため、洪水アペックス・プログラムとして複数のプロジェクトを立ち上げ、産業界と自治体が共同で安価なIoT洪水センサーを開発するといった、実用的な研究開発を進めている。パイロットプログラムとして3つの企業をパートナーとして選出し、5地域に設置する洪水センサーを設計・開発・製造させている。開発されたセンサーは洪水が起こりやすく、米国地質調査所(USGS)がすでにセンサーを配置している地域の周辺に配置され、競合する企業の異なるセンサーがUSGSの高機能なセンサーとともに地域を監視することで、精度を高めることが期待されている。新たに開発されたIoT洪水センサーは低コストで信頼性が高く、メンテナンスなしで何年もの間機能し続けることが可能。センサーの8割はすでに配置され、残りは11月半ばまでに設置を終えるという。(2018年11月8日)
技術研究情報:地震計を自動的に最適化―サンディア国立研究所
個々の場所の地震活動に対する感度を上げるように地震計を調整するには、一個ずつ手作業が必要だが、米エネルギー省サンディア国立研究所では、これを自動的に行うソフトウェアを開発している。3年間開発したもので、個々の地震計から送られるデータを利用して設定を自動で調整し、誤検知を減らすという。最新のテストでは誤検知が18パーセント減り、検知失敗は11パーセント減ったという。(2018年10月29日)
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出版情報他:米国土安全保障省「2018年度全米準備態勢報告書」
本報告書は、2017年に起こったインシデントの教訓と、連邦政府等の集積したデータやインプットを合わせ、全米の災害準備体制の進捗状況を概観したものである。オペレーション上の調整、インフラシステム、住環境、経済復興、サイバーセキュリティという中核となる5つの災害対応能力に関わる成功例、課題13件を中心に、個人、企業、NPO、各級政府機関といった地域社会の当時者全員が、全国の災害準備体制向上のためにすべきことを考える。(2018年11月14日発行、62ページ)
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出版情報他:国際赤十字赤新月社連盟「世界災害報告2018」
人道支援を行う人々が支援を必要としている被災者に支援を届けられないことにつながる5つの間違いを指摘し、これらの構造的問題を克服するための推奨策を提案する。(2018年11月発行、252ページ)
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出版情報他:GAO報告書「ダムの安全性―FERCはリスクを分析せよ」
米連邦エネルギー規制委員会(FERC)は、水力発電用ダム2500か所以上を監督している。FERCの承認を受けたカリフォルニア州のダムで2017年に大規模な崩落が起き、ダムの安全性に深刻な疑問が投げかけられた。FERCのエンジニアたちはダムを検査して工法を点検することで、FERCが個々のダムを理解することを助けているものの、手順などを記録するための手法は標準化されておらず、ダムの比較に基づく安全性リスク評価をできていない。GAOでは検査のための標準化された手続や用語を策定し、FERCの管理するダム全体を通じて安全性リスクを評価できるようにすることを推奨する。(2018年11月5日公表、51ページ)
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