2月分
ニュース:ブラジルでダム決壊、177人死亡
1月25日、ブラジル南東部のミナスジェライス州ブルマジーニョで鉄鉱石の尾鉱(有用鉱物を取り除いた残りの鉱石)を蓄えていたダムが決壊、2月25日までに177人の死亡が確認され、133人が行方不明となっており、最近50年間で最悪の鉱山事故となった。鉱山を保有する資源開発大手のヴァーレ社とダムの安全性を確認した独TÜV SUD社との間に不適切な関係があり、事故前に指摘されていた安全性の問題が無視されていた可能性が高いとして、ブラジルの検察が捜査している。ダムは1976年竣工し、80メートルの高さがあり、1170万立方メートルの尾鉱の貯蔵を許可されていた。(2019年2月25日)
ニュース:米国初の地震警報システム始動
米国で初めての地震警報システムが、ロサンゼルスで本格的に運用を開始した。ShakeAlertLAは、カリフォルニア統合地震観測ネットワークのセンサー約400か所で、地震の初期に発生するP波を検知し、マグニチュード5以上の地震が到達する最大90秒前に警報を発信する。スマートフォン向けのアプリが1月2日に公開された。現在はロサンゼルス郡にいる人にしか警報が行われない。今後、警報が行われる地域をカリフォルニア州全域、オレゴン州、ワシントン州に広げていく。(2019年2月22日)
ニュース:ヒューストン市がハリケーン災害の精神的苦痛を調査
テキサス州ヒューストン市は、2017年8月のハリケーン・ハーヴィによる災害の市民への影響に関する調査結果をこのほど公表した。住民の約3分の2は、ハリケーンとその水害が生活にどのような影響を及ぼすのか、今後どのような被害がもたらされるのかを不安に感じ、今も雨が降ると不安を感じるといった精神的苦痛を訴えている。この割合は、身体的苦痛を訴える人の割合よりも多かったという。(2019年2月21日)
ニュース:米空軍省の下に宇宙軍設置へ
トランプ米大統領が2月19日に署名した宇宙政策指示第4号は、宇宙を担当する新たな軍種の設置を大統領に答申する権限を国防総省に与えた。トランプ氏は過去に、陸海空軍各省と並ぶ宇宙軍省の設置を主張していたが、国防総省が起草した法案要綱は、海軍省の下の海兵隊のように、空軍省の下に宇宙軍を設置し、米軍の宇宙活動を集中する。国防総省はこの文書と予算案を行政管理予算局に提出し、承認されれば議会に提出する。議会が法制化すれば、1947年に空軍が陸軍から独立して以来、初めての新たな軍種として宇宙軍が発足する。宇宙軍創設の初年度費用は1億ドル(110億円)以下、大将が参謀総長を務め、文官トップとして宇宙軍担当空軍次官が配置されるという。(2019年2月21日)
ニュース:FEMA長官が辞任
2017年7月から米連邦緊急事態管理庁(FEMA)の長官を務めていたウィリアム・ブロック・ロング長官が13日、辞任を表明した。緊急事態管理の分野で19年以上のキャリアを持ち、FEMA職員には信頼されていたが、2018年秋からは、上司のニールセン国土安全保障長官との軋轢や、ワシントンD.C.とノースカロライナ州の自宅の間を公用車で頻繁に往復したことが問題視されるなど、政権との不協和音が報じられていた。(2019年2月13日)
ニュース:気候変動とサイバー攻撃が最大の脅威
ピュー・リサーチ・センターが2018年に世界26か国で行った調査によると、多くの人が気候変動を最大の国際的脅威とみなしていると同時に、ISISとサイバー攻撃に対しても大きな懸念を抱えていることが明らかになった。北朝鮮の核開発を回答者が脅威に挙げた国は多いものの、どの国でも二大脅威の一つに挙げられず、世界経済の現況が脅威に挙げられた国も少なかった。(2019年2月11日)
ニュース:カナダが過激化防止の専門家委員会設置
カナダの公共安全・緊急事態準備大臣は、暴力的過激化に対抗するための国家専門家委員会を新設した。幅広い分野から10名の専門家を集めた。2018年12月11日に発表された『暴力への過激化に対抗するための国家戦略』が、知識の構築・共有・利用、インターネット上の暴力的過激化に対する取り組み、介入支援という3つの優先事項に沿って運用されるように保証することが、同委員会の任務である。(2019年2月11日)
ニュース:レンタカー会社にテロ摘発を指南するビデオ
米国土安全保障省、FBI(連邦捜査局)、TSA(運輸安全局)は全米トラックレンタル協会などと協力して、借りた車両を使ってテロを起こす可能性がある不審な客を、トラックレンタル会社の社員が見極める助ける目的で、ビデオを製作した。不審者の特徴を示し、身に危険が及ばない範囲で、不審者の特徴や不審に感じた点を記録することを呼びかけている。客と相対するレンタカー会社員は、何に留意すべきか訓練を受けていれば、危険信号を察知することが可能であり、テロを防止する大きな助けとなると、国土安全保障省は考えているという。(2019年2月8日)
ニュース:チリ全国のATMに不正侵入
チリ国内の銀行間ATMネットワークを運営するRedbanc社が、昨年12月末に不正侵入にあっていたことを公表した。同社はチリ全国のATMを管理しており、使用されたマルウェアは北朝鮮のラザルスグループが発信源である可能性が高いという。今回の攻撃は、LinkedIn上の虚偽のソフトウェアデベロッパー求人広告にRedbanc社員が応募したことから始まり、Skype上で偽の面接を受けさせられた後、ウェブリンクを通じて送付されたファイルをダウンロードするように仕向けられたという。その結果、この社員のコンピュータはマルウェアに侵入され、攻撃者は同社のネットワーク・セキュリティの穴を発見することに成功したという。侵入手段はフィッシングメールではなく、ソーシャル・ネットワーキング・サービスを利用したソーシャル・エンジニアリングという新たな手段であった。(2019年2月9日)
ニュース:サイバーセキュリティ違反に違約金1000万ドル
北米電力信頼度協議会(NERC)は、サイバーセキュリティ上の義務を怠った電力会社に、過去最高額となる1000万ドル(11億円)の違反金を課した。企業名は明かされていないが、デューク・エナジー社だという報道もある。軽微なものから深刻なものにいたるまで130項目の違反が発見され、長期間放置されてきた違反や、物理的およびサイバー上のセキュリティ措置を導入しなかったことにより、電力網のセキュリティと信頼性に深刻なリスクを及ぼしたと報告書は述べている。(2019年2月5日)
ニュース:米スーパーボウルの警備に特別体制
2月3日にジョージア州アトランタで開かれた今年のスーパーボウル(ナショナル・フットボール・リーグ優勝決定戦)の警備には、国土安全保障省の25の部署のほぼ600人が携わっている。観客数やテレビ中継視聴者の数から、スーパーボウルは大統領の一般教書演説と同等レベルの全米特別警備体制イベントに指定されており、警備の準備は2年前に始まった。試合当日はメルセデスベンツ・スタジアムの周辺30マイル(48キロ)以内は飛行禁止区域に指定され、スタジアムへの配送を行うトラックはすべて放射性物質と爆発物の検査を受けた。スタジアム内およびアトランタ市の要所には、緊急対応チームがいつでもただちに駆け付けられる体制が敷かれた。(2019年2月2日)
ニュース:北極に多剤耐性菌
2010年にインドで発見された多剤耐性菌の遺伝子が、北極圏のノルウェー領スピッツベルゲン島の土から発見された。英ニューキャッスル大学の研究者が確認した。多剤耐性菌が3年間でインドから移動したとみられ、世界規模でどれだけ早く拡散するかを改めて知らしめた。研究に携わったライト教授は、多剤耐性菌への対処法を世界規模で考える必要があると強調している。(2019年1月28日)
ニュース:米政府機関閉鎖、一時解除
1月25日夜、トランプ大統領が2月15日までのつなぎ予算に署名し、35 日間に及んだ米国史上最長の連邦政府機関一部閉鎖が一時的に解除された。つなぎ予算には、大統領が要求していたメキシコ国境の壁の建設費は含まれない。航空管制官の欠勤が増えたためニューヨーク・ラガーディア空港で飛行が制限されるなど、閉鎖の長期化の影響が市民生活に表れ始め、政権に対する非難が強まる中で、大統領は妥協を余儀なくされた形だ。(2019年1月26日)
ニュース:英政府、耐性菌制御のための行動計画を発表
英政府は、2040年までに薬剤耐性菌を封じ込めて制御するために、英国がどのように貢献すべきかを記した、20か年計と5か年の行動計画を発表した。2025年までに薬剤耐性菌の感染を10パーセント減らし、抗生物質のヒトへの投与を15パーセント減らし、医療機関への訪問を原因とする患者が出ないようにするといった目標を掲げている。薬剤耐性感染症の数を減らし、医療従事者が適切に薬を処方することで既存の抗生物質が効果を発揮し続けるようにすることを目的としている。(2019年1月24日)
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ニュース:米政府機関に対するDNSハイジャックを確認
DNS(ドメイン・ネーム・システム)インフラに対する世界的なハイジャック攻撃を受けて、米国土安全保障省サイバーセキュリティおよびインフラセキュリティ局(CISA)は1月22日、攻撃を受けたドメインを保有する複数の米連邦政府機関に対して緊急指令を発令した。米政府機関以外にも中東、北アフリカ、欧州、北米のテレコム企業、インターネットインフラ企業などに対するDNSハイジャックが確認されている。インターネットセキュリティ会社のFireEyeによると、攻撃を行っているのはイランとつながりをもつ集団の可能性が高いという。(2019年1月22日)
ニュース:米政府のプエルトリコに対する災害援助は本土より少ない
米テキサス州とフロリダ州におけるハリケーン・ハーヴィおよびイルマ(2017年)の被害に対する米政府の支援は、プエルトリコにおけるハリケーン・マリア(同)の被害に対する支援よりも迅速で、金額とリソースも多いとする論文を、ミシガン大学の研究者が発表した。テキサスとフロリダの被災者は発災後9日以内にFEMA(連邦緊急事態管理庁)から1億ドル(110億円)の支援金を受け取ったが、プエルトリコでは600万ドル(6.6億円)にすぎない。また、復旧作業のピーク時にテキサスには3万1000人の緊急時支援要員が入っていたのに対し、プエルトリコではピーク時でも1万9000人に満たなかったという。報告書は、地理的制約だけでは対応のこれほど大きな差異は説明できないとしている。論文「テキサスおよびフロリダとプエルトリコにおけるハリケーン災害への米連邦政府の対応の不公平を数量化する」はBMJグローバル・ヘルス誌2019年1月号の下記サイトに掲載されている。(2019年1月22日)
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技術研究情報:IoT機器向け新たなPUF技術
「半導体チップのオリンピック」とも呼ばれる半導体回路技術の国際学会ISSCCが2月20日に開催された。米ライス大学の研究者は、IoT(モノのインターネット)機器向けに、既存の物理的複製防止機能(PUF 個々の半導体デバイスに固有のデジタル指紋)よりも10倍以上信頼性が高いというPUF技術を発表した。それぞれのPUFに対して2つの独特な指紋を作製することによって信頼性を高めた。この「ゼロオーバーヘッド方式」は2つの鍵を作製するのに同じPUF要素を利用し、余計なエリアや待ち時間を必要としないという。世界のIoT機器は今後5年以内に1兆個を超えると予測されており、そのセキュリティは喫緊の問題となっている。(2019年2月21日)
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技術研究情報:DropBox社、コンテナの放射性物質検査技術開発に
米オハイオ州のコンテナ改造業者DropBox Inc. は、米国の港湾に外国から到着したコンテナの放射能を測定するコンテナ型システムの開発を米国土安全保障省から受注した。契約の期間は10年間、金額は215万ドル(2億3700万円)。現在、無作為抽出されたコンテナを検査するには、ストラドルキャリア(コンテナを移動したり積み上げたりする特殊自動車)を停めてコンテナを地面に下ろし、手作業で検査する必要がある。そのためもあって、米国の港湾の約5パーセントしか放射能を測定されていない。DropBox Inc. が開発中の技術では、コンテナ型の放射線測定器を積み上げて作ったトンネルを、ストラドルキャリアがコンテナを持ち上げたまま走り抜けて、多数のコンテナの放射能を次々と測定するので、交通を妨げずに、放射能を測定するコンテナの比率を上げることができる。(2019年2月14日)
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技術研究情報:橋梁への津波の影響を再検証
オレゴン州立大学の研究者たちは、津波の衝撃のメカニズムを理解し、橋梁の破壊を最小限に抑えるためのシミュレーションを含む研究を行った。津波が橋全体にかける負荷を考えるだけでは不十分で、橋の構造の各部分にかかる負荷を考える必要があるという。支承部の破損が津波の後に多くみられることから、橋のコンポーネントに津波が及ぼす影響を数値化し、根底にある物理的特性を読み解く必要があると研究者は述べる。研究はジャーナル・オブ・マリーン・サイエンス・アンド・エンジニアリングに掲載された。(2019年2月13日)
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技術研究情報:自動ロックがかかる携帯機器
米国防総省の国防情報システム局(DISA)は、持ち上げて動き回ると自動的にロックがかかる機器を開発している。機器はユーザ認証を行うまでロックが解除されることはなく、紛失や盗難の際は遠隔操作でデータを消去することができる。機器に埋め込まれたチップはユーザの歩き方、位置、顔の構造、声紋を分析して認証を行う。試験運用ではスマートフォンのアンドロイドが用いられたが、ラップトップやその他の携帯機器でも利用できる。DISAはこの技術を業界が商用機器に利用できるようにすることを目標としている。(2019年2月4日)
出版情報他:ランド研究所「実際的なテロ防止―イデオロギーを動機とする暴力の脅威に対抗するための米国のアプローチを再検討する」
国土安全保障省がランド研究所に運営を委託している国土安全保障運用分析センター(HSOAC)が、過去の「暴力的過激主義への対抗(CVE)」と現在のテロ防止の取り組みを検証し、国土安全保障省および省庁間の態勢を評価し、今後のテロ防止政策の選択肢を検討した報告書。テロリストが勧誘対象としている地域社会にこの課題を認識してもらうための国土安全保障省による教育、官民パートナーシップを通じたテロ勧誘への対抗策、逮捕・訴追に至らない段階の疑わしい行動を通報するための選択肢の必要性に触れつつ、現行のテロ防止対策の限界、逆に効果的と証明された手法などを詳述している。(2019年2月発行、335ページ)
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出版情報他:FEMA「米国の公共警告・警報システムを近代化する」
緊急時には、効果的な警告・警報を発するための信頼できるシステムが欠かせない。そうしたシステムの構築をめざしたFEMA全米諮問委員会(NAC)統合公共警告・警報システム(IPAWS)小委員会の最終報告書。2015年IPAWS近代化法によって、同小委員会は統合公共警告・警報システムを改善するための推奨策をNACに提出することを義務付けられており、米政府の7省庁、民間セクターの代表、専門家などの協力を得て作成された。(2019年2月15日公表、38ページ)
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出版情報他:マイクロソフト社、アクセンチュア社「物理的セキュリティの未来」
世界的なデジタル革命は、世界をよりよくした面も多いが、期せずして新たな脅威も生んだ。ソーシャルメディアやメッセージプラットフォームは、開発者の知らないうちに、大量死傷事件を計画・指揮する新たな方法を提供している。セキュリティ担当者は今まで以上の課題に直面している。調査に応じた各産業界の物理的セキュリティ責任者が指摘した2つの大きな課題は、第一に、脅威の管理が後手後手に回っていること、第二に、直観と主観に基づく意思決定であり、そのため、攻めのセキュリティを行うことが難しいという。(2019年1月30日発行、21ページ)
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