11月分
ニュース:ヴェネツィアで過去最悪の高潮被害
イタリア北東部の都市ヴェネツィアで、ここしばらく降り続いた雨の影響で、11月12日、過去50年で最悪とされる187センチの高潮を観測、14日にはコンテ首相が緊急事態を宣言した。17日には高潮は170センチに達し、統計を取り始めた1872年以来最悪の記録となった。市内の85パーセントが浸水し、被害額は10億ユーロ(1200億円)に上るという。(2019年11月17日)
ニュース:WHO、エボラワクチンを事前承認
世界保健機関(WHO)は、エボラ出血熱の注射用ワクチンErvebo(メルク社製、北米以外での名称はMSD)の品質・安全性・有効性がWHOの基準を満たすとして、エボラ出血熱ワクチンとして初めて事前承認した。これにより、Erveboのライセンス供与や、高リスク国における展開・利用が大いに加速されると期待される。WHOが承認したワクチンの中で、事前承認にかかった期間がもっとも短い。(2019年11月15日)
ニュース:抗菌薬耐性菌による死者が増加
米疾病予防管理センター(CDC)は、米国で毎年3万5000人が薬の効かない感染症によって死亡しているという報告書を公表した。また、CDC報告書公表と同日、ニューヨーク州公衆衛生局は、州内の64の病院と103の老人ホームで、抗菌薬耐性をもつカンジダ・アウリス(真菌)が発見されたと明らかにした。カンジダ・アウリスは過去数年間に各国で広がっていたが、どの国の政府も菌が発見された医療機関を公表したがらず、全容は不明のままであった。ニューヨーク州は、菌の拡散の速さに危機感を抱き、従来の慣行を破って透明性をもたらし、拡散阻止に向けて医療機関が全力を尽くすことに期待して公表に踏み切ったとしている。(2019年11月14日)
ニュース:米国土安全保障省長官代行にウルフ氏
米上院は、トランプ大統領が国土安全保障省の戦略・政策・計画担当次官に指名したチャド・ウルフ氏を承認した。ウルフ氏は2月8日から、同省の戦略・計画・分析・リスク担当次官補を務めていた。同省長官は4月10日にニールセン前長官が辞任してから、ケヴィン・マクアリーナン氏が代行してきた。マクアリーナン長官代行は10月11日に辞任し、長官候補がいないので、新たな長官代行が必要となっていた。憲法上、長官代行は上院の同意により任命された高官を任命しなければならないという説が有力なので、ウルフ氏を任命するためにはまず、上院の同意により任命される国土安全保障次官に昇任させる必要があった。ウルフ次官は即日、国土安全保障長官代行に任命された。(2019年11月13日)
ニュース:米国内のダム、多数が破損―AP報道
AP通信社が2年以上かけて調査した結果、米国の多数のダムが老朽化して破損し、近隣住民が危険にさらされている現状が明らかとなった。44州とプエルトリコにある1688のダムが劣悪または不十分な状態にあると連邦政府当局が評価しており、実際にはさらに多くのダムが問題を抱えていると見込まれる。ダム安全協会によると、米国に9万以上あるダムを修理し近代化するためには700億ドル(7.6兆円)が必要だという。(2019年11月11日)
ニュース:豪南東部で林野火災
オーストラリア南東部のニューサウルウェールズ州で、空気が乾燥しているため林野火災が多発、これまでに3人が死亡、住宅150棟以上が全焼した。今後、気温の上昇と強風が予測されており、州政府は非常事態宣言を出して注意を呼びかけている。(2019年11月11日)
ニュース:英政府が対過激派特使職を新設
英国のプリティ・パテル内相はジョン・ウッドコック下院議員を、暴力的過激主義対策特使に任命した。これは新設されたポストで、主に極右の暴力的過激主義を対象としに、世界の最善慣行を取り入れることを目的とするという。ウッドコック議員は労働党を昨年離党しており、今年12月に予定されている総選挙には出馬せず、保守党支持を呼びかけている。(2019年11月7日)
ニュース:ブラジル鉱山ダム事故、所有企業は事前に問題把握か
今年1月に死者270人を出したブラジルのブルマジーニョ尾鉱ダム決壊事故について、同国の炭鉱業規制当局は、ダムを所有するヴァーレ社が、事故の数か月前からダムの問題点に気づいていながら、当局への報告を故意に怠っていたと明らかにした。ブラジル鉱業局が5日公表した報告書によると、当局が適切に報告を受けていれば事前に対策をとり、ヴァーレ社にも緊急措置を要求することで、大災害を防げた可能性を指摘している。ブラジルの鉱業に関する法律は比較的厳しいものの、巨大な産業界を監督するために必要なリソースを当局が欠いているため、企業の自発的な報告に大きく依存しているという。(2019年11月5日)
ニュース:結核感染者用ワクチンの開発が進む
グラクソ・スミスクラインと非営利団体Aerasは、新しい結核ワクチンM72/AS01E(Eは下付き文字)の治験で、結核感染者の発症率を半減させる効果を得た。有効率50パーセントは既存のワクチンより低いとはいえ、M72/AS01Eは結核感染者に有効な初めてのワクチンである。人類の約25パーセントは結核菌に感染しており、感染者の5-10パーセントはやがて発症し、空気感染を引き起こす。今回の治験では、ケニア、南アフリカ、ザンビアの成人の感染者3575人のうち半数にM72/AS01E、半数にプラセボが投与された。認可されるためにはより大規模な治験が必要だが、今回の結果は有望だ。(2019年10月30日)
ニュース: IS指導者が米軍に襲われ死亡
テロ組織IS(いわゆる「イスラム国」)の指導者アブ・バクル・バグダディが、シリア北西部、トルコ国境に近いイドリブ県バリシャの隠れ家で、米軍特殊部隊に追い詰められ自爆死した。バグダディの監視と事前のDNA採取は、クルド人を主力とするシリア民主軍が、IS戦闘員をスパイとして獲得し、バグダディの身辺に潜入させて行った。トルコ軍がシリア民主軍を攻撃したため、バグダディ急襲作戦は当初の予定より1か月延期された。作戦名「カイラ・ミューラー作戦」は、ISに拉致され死亡した米国人女性の名から付けられた。(2019年10月27日)
ニュース:どの国にも感染症対策の隙間がある
感染症の流行に対する世界195か国の予防・探知・対応能力を評価したグローバル・ヘルス・セキュリティ(世界健康安全保障)指数を、シンクタンク・核脅威イニシアチブ(NTI)とジョンズ・ホプキンス大学ヘルス・セキュリティ・センターが発表した。され、備えが完全に整っている国は世界にひとつもないという結果が出た。どの国にも対策の隙間があり、195か国の平均は100点満点中40.2点、高所得国60か国に限っても平均51.9点にすぎない。66.7点以上の先頭集団は13か国だけで、日本は59.8点、21位だった。高所得国以外ではタイ(73.2点、6位)だけが総合評価の先頭集団に入った。(2019年10月26日)
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ニュース:ライオンエア航空、事故最終報告書を公表
189名が死亡した2018年10月29日の墜落事故について、インドネシアのライオンエア航空の事故調査委員会が最終報告書を公開した。報告書は、事故を起こしたボーイング737 MAX8型機の設計上の問題、米国の規制当局の監督不十分、整備不良など安全上の問題点を羅列しているものの、決定的な原因を指摘するには至っていない。(2019年10月25日)
ニュース:加州で火災防止のための計画停電実施
カリフォルニア州の電力会社PG&Eは10月9日から12日、200万人に影響を及ぼす大規模計画転電を実施したのに引き続き、サンフランシスコ湾岸地域の18万世帯への計画停電を23日実施した。乾燥した天気と強風の中、切断された電線による火災を避けるためで、カリフォルニア州南部でも地元の電力会社が30万世帯への計画停電を検討しているという。(2019年10月24日)
ニュース:加州北部で林野火災
カリフォルニア州ソノマ郡で10月23日夜、林野火災が発生した。翌24日午後までに数百人の消防士が投入されても5パーセントほどしか消火できず、65平方キロが焼け、49棟の建物が焼失した。週末にかけての強風で、煙はサンフランシスコ市にも流れた。キンケード火災と命名され、11月6日に鎮火するまで、314平方キロが焼け、374棟が破壊された。出火原因は確定していないが、地元の電力会社PG&Eは、強風による林野火災を予防するため送電を止めようとしていたところ、発生現場付近の230 kV送電線が停電したと報告しており、火災との関連が疑われている。(2019年10月24日初報、11月6日更新)
技術研究情報:蚊を不妊化することで伝染病抑制
デング熱、ジカ熱、チクングンヤ熱といった、蚊によって媒介される感染症の抑制を目的として、放射能を用いてオスの蚊を不妊化する技術が近いうちに試験される。昆虫不妊化技術(SIT)は、不妊化したオスの蚊を大量に施設で飼育した後、屋外に放して野生のメスと交尾させる。交尾しても産卵することはないため、蚊の数は次第に減少することになる。熱帯病研究訓練特別計画(TDR)、国際原子力機関(IAEA)、国連食糧農業機関(FAO)、世界保健機関(WHO)が協力して、SITに関心を示した国々に向けた手引書を開発した。TDRは国連児童基金(ユニセフ)、国連開発計画(UNDP)、世界銀行、WHOの共同事業である。(2019年11月15日)
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報告書など:米国科学・工学・医学アカデミー出版「感染症と非感染症の収れん」
米国科学・工学・医学アカデミーは、ヒトと病原菌の間の相互作用がいかにヒトの生理機能に影響し、感染症以外の病気を引き起こすのかについて理解を深めるため、ワークショップを開催した。感染症と非感染症の関連性の新研究、感染症の罹患と重症度のリスク要因としての慢性疾患、微生物叢の影響といった問題を討議した。ワークショップでは収れんがもたらす課題と機会、医療提供モデルと医療介入の統合、当面の研究・政策・実践のために可能なアプローチ、長期的視点からの今後の方向性といった問題も検討した。(2019年11月公表)
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報告書など:CISA「重要インフラセキュリティと災害回復力」
11月の重要インフラセキュリティ強化月間に伴い、米国土安全保障省サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ局(CISA)が発行した手引書。過去15年の優れた慣行、アプローチ、経験などを共有し、米国内外の重要インフラセキュリティの災害に対する回復力を強化することを目的とする。ハリケーンやテロといった特定の脅威に注目するのではなく、重要インフラに大きなリスクをもたらすすべての脅威を割り出し、包括的なアプローチをとることで、より効果的かつ効率的なインフラセキュリティ計画と資源配分が可能になる。(2019年11月発行、23ページ)
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報告書など:GAO報告書「米領ヴァージン諸島の復興―追加措置によって、FEMAの災害復興努力の主要部分を強化することが可能である」
2017年9月に米領ヴァージン諸島を襲った2つの巨大ハリケーンからの復興支援として、インフラの修復作業などのために、FEMAは19億ドルを拠出した。十分な避難所がなかったので、被災者の在宅避難のための自宅修理支援制度を試験的に拡大したが、実施に時間がかかり、FEMAは今後、この制度を使用しないことに決めた。しかし、FEMAは今後の災害時に支援する避難所の選択肢をまだ検討していない。(2019年11月19日公表、76ページ)
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報告書など:FEMA PrepTalk「水との共生―オランダはいかに洪水を防いでいるか」
オランダのインフラ・水管理省から在米大使館に派遣されているヤン・ペーレン氏が、オランダにおける洪水との戦いの歴史と、オランダ人がどのように水と共生することを学んだかを語る。(2019年11月19日公表)
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報告書など:FEMA「地域社会ライフライン導入のためのツールキット」新版ほか
生命財産に対する脅威を軽減するため、災害時に安定化または再開しなければならない地域社会の重要なサービスをライフラインという。地域社会に携わるすべての人々に対し、ライフラインとはなんたるかを理解し、ライフライン使用者どうしで調整し、事態対応中にライフライン・モデルを実施するための情報とリソースを提供する。国家対応枠組みの更新に伴い、こちらも更新された。(2019年11月18日公表)
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報告書など:GAO報告書「交通機関に対する緊急支援―連邦運輸局とFEMAは調整に乗り出したが、資金援助が重複するリスクに対する措置が必要」
2017年の三大ハリケーンはテキサス、フロリダ、米領ヴァージン諸島、プエルトリコの都市交通施設に数億ドル(数百億円)の損害を与えた。連邦運輸局(FTA)は、被災地の52の都市交通組織に支援金2億3300万ドル(260億円)を供与すると表明した。被災地の都市交通組織はFTAまたはFEMA(連邦緊急事態管理庁)に支援金を申請することができる。FTAとFEMAは相互調整を行っているものの、同じ損害の修復のため両社から重複して資金を受けている都市交通組織が複数あった。このような重複受給を減らすための対策を推奨する。(2019年11月13日公表、29)
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報告書など:米シークレットサービス「米国の学校を守る―学校に対する暴力的攻撃の分析」
2008年から2017年の間に幼稚園・小中高校が狙われた殺傷事件41件を分析したところ、容疑者の生徒の大半はいじめを経験しており、規律上の問題を抱え、周囲が心配する生徒であったものの、それが学校側に報告されることはなかった場合が多かった。包括的な無差別殺傷抑止プログラムを取り入れ、事件を起こすおそれのある生徒を特定し、彼らが暴力など有害活動を行うリスクを評価し、介入戦略を取り入れることで、多くの事件を抑止できる可能性がある。(2019年11月8日発行、35ページ)
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報告書など:FEMA「国家対応枠組み 第4版」
あらゆる種類の災害に米国の官民がいかに対応すべきかを記した手引書。全米インシデント管理システム(NIMS)で特定された計測可能、柔軟かつ導入可能な概念を基礎に作られており、命を救い、資産と環境を守り、災害時に人々の営みの基本的なニーズに応えるために必要な能力の構築を目的としている。今回の更新では、災害対応における市民個人と民間部門(営利・非営利)の役割を含めること、政府とインフラ運用者の既存の調整メカニズムを活用する緊急時支援機能の追加、地域社会のライフラインの迅速な安定を優先する結果重視の対応を重視している。
(2019年10月29日公表、57ページ)
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(2019年10月29日公表、57ページ)
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報告書など:GAO報告書「災害回復力の枠組み―自然災害に対する回復力を促進する連邦政府の取り組みを分析するための原則」
災害に対する回復力を促進する米連邦政府の取り組みを分析するため、GAOは「災害回復力の枠組み」を策定した。これは三つの原則と一連の質問からなっており、連邦政府の取り組みを監督または管理する者が、国の災害回復力により貢献する機会を分析するために使うことを目的としている。三つの原則とは、1)情報つまり意思決定者にリスクおよびリスク低減策に関する確かで理解可能な情報を提供すること、2)統合つまり調整されたわかりやすい行動を意思決定者がとれるようにすること、3)インセンティブつまり長期的で前向きなリスク低減策への投資の優先順位を高めることである。(2019年10月23日、24ページ)
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報告書など:GAO議会証言「災害復旧―昨今の災害は、進展も課題も浮き彫りにした」
極端な気象現象が頻発する中、米連邦政府は2005年以後、災害復旧のため4500億ドル(45兆円)以上を支出してきた。GAO(米議会の政府監査院)の調査は、連邦政府の復旧事業の複雑な制度が、支援が遅れる原因となっていることを示している。GAOは、林野火災復旧支援活動をFEMA(連邦緊急事態管理庁)が分析して改善点を洗い出すこと、住宅都市開発省の災害復旧用の包括的補助金を議会が常設すること、有効な支援に必要な技能と人数の労働力をFEMAが備えるように労働力管理を改善することなどを推奨している。本文書には、下院運輸・インフラ委員会の経済開発・公共建造物・緊急事態管理小委員会で10月22日にGAOの国土安全保障・司法担当部長クリス・カリーが行った証言を収録した。(2019年10月22日発行、37ページ)
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