5月分
ニュース:大型サイクロン、インドとバングラデシュに上陸見込み
1999年に9000人の死亡者を出したサイクロン以降、初めてとなるスーパーサイクロン・アンファン(Amphan)がベンガル湾を北上し、バングラデシュとインドで約300万人が避難した。新型コロナウイルス対策のために避難所が定員を減らしていることに加えて、感染を恐れて避難をためらう人も多かった。アンファンは18日、風速43メートルでインドの西ベンガル州に上陸した。スリランカで4人、インドで98人、バングラデシュで26人が死亡した。(2020年5月23日)
ニュース:ブラジルの新型コロナ死者急増
19日、ブラジルでの新型コロナウイルスによる1日の感染者数が1万7408人、死者数が1179人に達し、流行のさらなる悪化が懸念されている。ブラジルではこれまでに1万7983人以上が新型コロナウイルス感染によって死亡しており、18日には英国を抜いて米国、ロシアに次いで世界で3番目に感染者が多い国となっている。ボルソナロ大統領は経済活動優先を強く主張しており、感染拡大防止に向けた外出自粛を求める州知事や保健相と対立、15日にはタイシ保健相が就任後1か月弱で辞任したばかり。タイシ保健相の前任者も同様の理由で大統領と対立、解任されている。(2020年5月20日)
ニュース:米Moderna社、コロナワクチン治験で好結果
米Moderna社が開発中のワクチンを健康な治験者8人に接種したところ、安全性と、強力な免疫反応を促すことが確認されたと報告した。予定を早めて近日中には600人に接種を行う治験の第2段階を、7月には数千人を対象に第3段階を行うという。臨床試験が順調に進めば今年末か2021年早々には一般に使用できるワクチンが準備できる予定だ。ウイルスのmRNA(伝令RNA)を用いたModerna社の技術は比較的新しく、承認済みのワクチンはないが、原理的には、新たな脅威となるウイルスが現れた際にも迅速に応用できるので注目される。(2020年5月18日)
ニュース:英電力市場にサイバー攻撃
14日、英国で電力市場運営に用いられているITインフラに対するサイバー攻撃が発生した。システムを運用するElexon社は、従業員が電子メールにアクセスできなくなるなど影響を受けたものの、電力市場を運営する主要システムには影響がなかったと発表した。同社は電力の需給の監視に主要な役割を担っている。(2020年5月14日)
ニュース:ワクチン情報への中国からの不正アクセスに警告
米FBI(連邦捜査局)と国土安全保障省は13日、中国が優秀なハッカーやスパイを使って、新型コロナウイルスのワクチン開発や治療法に関する米国の研究を盗もうとしていると警告、関係組織に注意を喚起した。個別の例には言及していない。パンデミックを逆手に取った国家による不正アクセスやサイバー攻撃は全体として急増しており、中国以外でも韓国など米国の同盟国や、サイバー能力がこれまで目立たなかったベトナムのような国が突然、ハッカーを雇ってウイルス関連の情報を収集しているという。ことに中国がワクチン、治療法や検査に関わる重要な知的財産や公衆衛生に関するデータを、大学や民間の研究所に在籍する研究者や学生を使って違法な方法で収集しようとしていることに対して、米サイバー軍やNSA(国家安全保障局)を含む広範な抑止戦略の一つとして、今回の警告発布に踏み切ったとみられる。(2020年5月14日)
ニュース:WHOがワクチン8種を最有力と特定
WHO(世界保健機関)は、新型コロナウイルスに対して開発中のワクチン数十種のうち、もっとも有力な7、8種を特定したと発表した。しかし、専門家によると、有効なワクチンが作られたとしても、世界的に集団免疫を形成するのに十分な量を製造するには何年もかかるという。検査数の大幅増加は、都市封鎖を解除するためカギとなると考えられているが、検査キットの製造能力が限られているので長続きしないという声も、バイオ企業関係者から上がっている。(2020年5月12日)
ニュース:フランスや中国で経済活動再開に向けた動き
5月11日、フランスは8週間に及んだ都市封鎖を解除し、一般の商店や工場の営業再開を許可した。学校は段階的に再開される。封鎖時には外出許可証を携帯する義務があったが、パリ市内のラッシュアワー時の移動を除いて不要となった。新型コロナウイルスによってフランスでは11日に263人、合計2万6000人が死亡したものの、新たな感染例は4月初旬から減り続けている。中国・上海ではディズニーランドがマスク着用、検温、社会的距離を保つことを条件に3か月ぶりに開園した。英国ではジョンソン首相が経済活動再開に向けた方針を発表し、テレワーク不可能な職種の職場復帰を認める一方、公共交通機関の利用自粛を国民に要請した。(2020年5月11日)
ニュース:ケニアで大雨被害
ケニアではこの数週間、大雨が続き194名が死亡、10万人が住居を失い、耕作地32平方キロが水没した。ケニアでも新型コロナウイルスの流行が徐々に拡大している一方で、過去70年で最悪となるバッタの大量発生にも悩まされている。(2020年5月7日)
ニュース:CDCが新型コロナウイルスのシークエンシング共同事業体を設立
米CDC(疾病管理予防センター)は、新型コロナウイルスの遺伝情報の利用を大幅に拡大する、「公衆衛生緊急事態対応、疫学および監視のためのSARS-CoV-2シークエンシング(SPHERES)」コンソーシアム(共同事業体)を設立した。全米のシークエンシング(塩基配列決定)研究機関をネットワーク化することにより、新型コロナウイルスのシークエンス・データの公開を加速化することが期待されている。このデータをリアルタイムで継続的に、全米のウイルス研究機関に公開することで、全国と地域のレベルでのウイルスの流行などに対する理解を深める。(2020年5月6日)
ニュース:WHOが新型コロナウイルス対策のバーチャルサミット開催
欧州連合や世界保健機関(WHO)の主導により、新型コロナウイルス対策基金を募るバーチャルサミットが4日開催された。ドイツ、フランス、英国、日本、イスラエル、トルコなど各国首脳が参加し、慈善団体や企業を含め合計82億ドル(8600億円)の拠出を約束したが、ロシア、インド、そしてWHOの危機対応を批判してきた米国は参加しなかった。(2020年5月4日)
ニュース:米国の多くの州で経済活動再開の動き
米国では経済活動再開のためホワイトハウスが定めた基準に達していない州が大半であるにも関わらず、31州が外出禁止令を緩和して一部の事業所の営業再開を認める方向であり、トランプ大統領も感染はすでにピークに達したとしてこの動きを歓迎している。全米では6月1日までに1日の感染者数が20万人、死者数は3000人に上るとの政権内部の予測を、ニューヨーク・タイムズが報じている。感染者数は5月初めの8倍、死者数は1.7倍となる計算だ。(6月1日の実際の感染者数は2万616人、死者数は933人、いずれも7日移動平均)(2020年5月4日、6月1日)
ニュース:米FDA、レムデシビルのCOVID-19患者への使用を承認
米FDA(食品医薬品局)は、開発中の抗ウイルス薬レムデシビルのCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)重症患者への緊急使用を許可した。COVID-19患者の治療に使用した際の安全性と効果には限定的な情報しか得られていないものの、治験で患者の回復を早めたケースが複数報告されている。(2020年5月1日)
ニュース:COVID-19患者に血栓
新型コロナウイルス感染者の多くに血栓があり、抗凝血剤を用いても心臓発作を併発したり、血栓で透析機材のチューブが詰まったりする事例が、多くの病院から報告されている。ICU患者の血栓は珍しくないが、新型コロナウイルス感染症のICU患者は血栓発生率がきわめて高く、31パーセントというオランダの研究報告もある。糖尿病、心臓疾患、高血圧といった持病が血栓の原因かもしれないが、比較的若い30代、40代の患者にも多くみられるので、免疫系の過剰反応も原因と考えられるという。(2020年4月24日)
技術研究情報:新型コロナ未感染者の半数に一定の免疫、過去のかぜが原因か
米ラホヤ免疫研究所の研究チームが、新型コロナウイルスに未感染の人の約半数が、すでに一定の免疫を備えている可能性があるとする研究結果を発表した。新型コロナウイルス流行以前の2015年から18年にかけて20人から採った血液を調べたところ、約半数から同ウイルスに対する獲得免疫を示すヘルパーT細胞が検出されたという。この結果は、かぜコロナウイルスに感染した経験によって、免疫系が新型コロナウイルスも認識できるにようになる交差免疫が起きたことを示唆しているという。研究結果はCell誌のオンライン版に掲載された。(2020年5月18日)
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技術研究情報:干ばつと大雨の悪循環が増加
世界の一部地域では気候変動のため、干ばつの後に大雨が続き、極端な気象が続けて起こる確率が上がっているという、プリンストン大学の研究者の研究が、Geophysical Research Letters誌に掲載された。一例として、豪州で近年、干ばつによる大規模な林野火災の後に、地滑りを引き起こすほどの大雨が降っていることを挙げている。世界のどの地域でこうした事態が悪化しているのかを割り出したうえで、気候変動に則したより効果的な計画や政策を立てる助けとなることが期待される。(2020年5月18日)
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技術研究情報:人体に無害で除菌効果をもつ紫外線を発見
インフルエンザなどのウイルスの感染を紫外線によって防ぐ研究を行ってきたコロンビア大学の研究チームが、人体に害を及ぼすことなく、空気中に浮遊するウイルスを殺す紫外線を発見した。紫外線のうちUVC光は殺菌効果があることで知られているが、皮膚がんや眼の異常を引き起こすなど人体にも害を及ぼすため、人がいる環境での使用が不可能だった。波長220ナノメートルほどの遠UVC光は、人体の表皮や眼を通過することがなく人体に無害な一方で、ウイルスは微小なので通過して殺すことが、今回発見された。空港、駅、航空機内といった公共の場所にランプとして設置すれば、ウイルスの空気感染を防ぐことができると期待される。(2020年5月)
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技術研究情報:薬剤耐性に関連する細菌の防衛メカニズムを発見
武漢大学、シンガポールMIT研究技術アライアンス(SMART)、上海交通大学、清華大学の研究者のチームは、特定の細菌のDNAをファージ(細菌に感染するウイルス)から守る未知の防衛メカニズムを発見した。この発見により、特定の細菌がファージ療法に対する耐性をもつ理由を解明することができる。論文は「SSpABCD-SSpEはチオリン酸化を感知する細菌防衛システムであり、幅広い抗ファージ活動を行う」と題され、Nature Microbiology誌に発表された。(2020年5月7日)
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技術研究情報:リャマの抗体が新型コロナウイルスに有効か
SARSとMERSのコロナウイルスの表面のスパイクタンパク質をリャマに注射し、生産された抗体を加工すると、新型コロナウイルスにも効果があることが、ベルギーのガン大学、米国立衛生研究所(NIH)、テキサス大学オースティン校の研究者チームによって報告された。研究結果は6日、Cell誌に掲載された。リャマが生産した抗体12種のうち、SARS VHH-72という1種は新型コロナウイルスのスパイクタンパク質に結合したが、短時間で外れたので、同ウイルスが細胞に侵入するのを防ぐ効果は見込めなかった。SARS VHH-72を2個融合させると、より固く新型コロナウイルスと結合させることができたので、感染を防ぐ効果が期待できる。研究者チームはハムスターとサルでの実験を準備しており、その次はヒト治験をめざしている。(2020年5月6日)
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技術研究情報:災害の二次的経済被害に注意喚起
イエール大学の林業と環境学の研究者は、災害による工場などへの経済的被害がその地域にとどまらない二次的経済被害を引き起こし、大災害の場合、その影響は被害全体の4分の3にも及ぶとする研究結果を発表した。熱帯低気圧の二次的経済被害は地理的位置よりも製造・供給ネットワークによるところが大きく、製造業の材料・装置の供給元が少なくて都市型ネットワークにその供給を頼っている地域のほうが、ニューヨークや北京のような世界的大都市よりも脆弱だという。気候変動が進む中、自然災害は直接の被害を受けた地域にとどまらず、都市型ネットワークを通じて波及することに注意喚起を促した。研究結果はNature Sustainability誌に掲載された。(2020年5月5日)
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技術研究情報:SARSに有効な抗体が新型コロナウイルスにも有効か
SARSコロナウイルスの研究を行っていたオランダのユトレヒト大学などの研究チームは、同ウイルスのヒトへの感染を防ぐ抗体の一種が、新型コロナウイルスにも同様に有効であることを発見した。研究成果はNature Communications誌に掲載された。(2020年5月4日)
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報告書など:FEMA「被害状況の仮評価の手引き」
「被害状況の仮評価の手引き」は、国(FEMA)・州・準州・自治体の緊急事態管理担当者が、災害後に被害状況の仮評価を行うための標準的な枠組みとして、2020年6月8日に施行される。この日からFEMAと共同で実施する被害状況の仮評価は、この手引きを使用しなければならない。FEMAは、この手引きに対する州・準州・自治体の緊急事態管理担当者の意見を聞くため、2021年6月8日までパブリックコメントを受け付ける。(2020年5月発行、127ページ)
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報告書など:GAO報告書「全国的準備体制―米国の緊急事態管理能力の隙間を埋めるため、さらなる対策が必要である」
州・準州政府が各自の緊急事態対応・復旧能力を評価できるように、FEMAはいくつかのシナリオを用いている。州・準州は各自の準備体制の長所と短所を把握しているのに、FEMAはその情報を利用して全国的なニーズの全体像を把握することを怠っている。また、州・準州の準備体制には、長年にわたって不足している部分もあるが、それを補うために連邦政府が必要とするリソースの評価も、FEMAはしていない。(2020年5月4日発行、55ページ)
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報告書など:GAO報告書「FEMAの災害対応人員―配備と教育訓練の課題に取り組む行動が必要である」
FEMA(連邦緊急事態管理庁)の資格認定システムと職員配備プロセスは、災害対応ポストに求められる訓練や能力の条件を追跡し、職員の資格や能力を確認し、現場から要請されたポストと能力レベルに合う職員を派遣することを目的としている。しかし、2017年と18年の災害シーズンには、FEMAは信頼できる人事情報を現場に提供できなかった。GAOが調査した14のフォーカスグループ全部で、資格を認定されているのに技能不足の職員が派遣され、災害支援に影響したという体験談が語られた。GAOはFEMAに対し、派遣する職員の技能と能力の信頼できる情報を災害現場の職員に提供するための計画を立てることなど、三つの対策を推奨する。(2020年5月4日発行、67ページ)
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報告書など:GAO報告書「抗生物質耐性―規模を把握して影響を減少させるために、連邦政府はさらなる対策を講じる必要がある」
薬剤耐性菌問題に米政府が取り組むうえでの課題である、監視、診断データ収集、新たな治療法の開発、抗生物質の使用の改善について検証し、8つの対策を推奨する。(2020年4月29日公表、135ページ)
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報告書など:GAO報告書「優先公開推奨事項-国土安全保障省」
GAO(米議会の政府監査院)は毎年、米政府各省の長官に対し、費用をもっとも節約できる分野、GAOの高リスクリストに挙げられた浪費や管理不行き届きのリスク、そして大幅な改善が可能な業務を指摘し、対策を推奨している。本報告書では2020年4月現在の国土安全保障省に向けた29の優先的な未解決の推奨事項を概観する。緊急時準備体制、国境・交通の警備、インフラ、サイバーセキュリティ、化学・核物質のセキュリティを対象としている。(2020年4月23日発行、24ページ)
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報告書など:米国科学・工学・医学アカデミー「COVID-19パンデミックに関する専門家の緊急提言」
米国科学・工学・医学アカデミーは、ホワイトハウス科学技術政策局と保健社会福祉省の要請により、新感染症など21世紀の健康上の脅威に関する常設委員会を設置している。常設委員会は2020年3月14日から4月8日にかけて、一連の緊急提言を公表した。助言は各々の報告書公表時の最新の科学的証拠に基づいている。これらの問題に関する科学は絶えず変化しており、常設委員会の科学的合意も今後、それにつれて変化していく可能性がある。(2020年3月14日~4月18日)
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