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10月分


ニュース:恵まれない地域社会を重点とするFEMAの補助金

林野火災、洪水、猛暑といった気象災害から住民やインフラを守るための事業に対する2023年度の補助金をFEMA(米連邦危機管理庁)が発表した。「回復力のあるインフラと地域社会を構築する」(BRIC)補助金10億ドル(1500億円)と、洪水減災支援(FMA)補助金8億ドル(1200億円)により、経済的・社会的に恵まれない地域社会も、災害回復力を備えるための取り組みに参加できるようにする。こうした補助金の恩恵の40%を「社会の主流から取り残され、環境汚染の負担が重く、十分なサービスを受けていない」地域社会に届けることは、バイデン政権の目標である。2022年度はBRICとFMAの恩恵の53%がこうした地域社会に届いた。
(2023年10月18日)

ニュース:世界で過激派の脅威増加―ハマスのテロ攻撃の影響波及

FBI(米連邦捜査局)のレイ長官は国際警察署長協会で演説し、ハマスのイスラエル攻撃とそれに対する反撃により、脅威の報告が明らかに増えているとして、とくに今回の武力紛争に触発された一匹狼型のテロリストを警戒するよう呼びかけた。フランスでは13日、イスラム過激思想をもつことが当局に知られていたロシア人(チェチェン人)により教師が刺殺された。フランス政府は警戒レベルを最高度に引き上げ、翌14日には重要地点を警備するため7000人の兵士を展開した。米国シカゴではムスリムであるという理由で6歳のパレスチナ系男児が男に刺殺され、母親も負傷した。ニューヨークでは反パレスチナ人、反イスラエルまたは反ユダヤの攻撃が複数報告されている。
(2023年10月14日)

ニュース:今年の9月は観測史上もっとも暑い9月

米海洋大気庁は10月13日、今年の9月は過去174年間の観測史上でもっとも暑い9月であり、もっとも季節外れに暑い月だったと発表した。20世紀の9月の世界平均気温は15度だったが、今年の9月はそれより1.44度暖かかく、これまでもっとも暑い9月だった2020年の記録を0.83度上回った。同庁によると、この高温の原因は地球温暖化とエルニーニョ現象(太平洋南東部の海流がもたらす気候サイクルの温暖局面)である。
(2023年10月13日)

ニュース:アフガニスタンで大地震

アフガニスタン西部のヘラート州で10月7日にマグニチュード6.3の地震が2回起き、11日と15日も同規模の地震が1回ずつ起きた。合計2400人以上が死亡した。男性は市外や畑へ働きに出ていたので、被害者の9割は自宅に残っていた女性や子どもだという。最初の地震発生後、地震を爆発と思って家に駆けこんだ被害者が多数いたことも被害を大きくした。
(2023年10月7日)

ニュース:米議会がつなぎ予算を可決しFEMA閉鎖を回避

米議会は10月1日の会計年度開始を前に予算法案を可決できていなかったので、連邦政府機関の閉鎖が確実視されていたが、上下両院が9月30日夜につなぎ予算を可決し、土壇場で回避した。成立したのは11月17日までの暫定予算で、FEMA(連邦危機管理庁)の16億ドル(2380億円)も含まれている。政府閉鎖が迫る中、FEMAは事前に「ただちに必要な支援」に支出を限り、緊急時の支出用に15億ドル以上をとっておくため、全米で1000以上の公的支援事業を中断する決定を下していた。
(2023年9月30日)

ニュース:豪州の春に大規模林野火災の不安

オーストラリアは9月に春を迎えたばかりだが、人口密度の高いシドニー都市圏で季節外れの高温が続いており、2019-20年にかけて起きた大規模林野火災に匹敵する災害が懸念されている。2019-20年の大規模林野火災の後、豊富な降雨に恵まれて植物が生い茂ったことに加え、高温と乾燥をもたらすエルニーニョ現象が報告されている。それゆえ、大規模林野火災の条件である植生と乾燥がそろっている。消防は野焼きなどの予防策を計画したが、減災措置の24%しか実行できていないうちに、数十もの小規模林野火災が発生した。2019-20年に出動して負傷した消防団員が退団して人手が不足したうえに、最近、大雨が続いたからだ。
(2023年9月20日)

研究開発情報:緊急地震速報に光海底ケーブルを利用

緊急地震速報における最大の課題のひとつは、地震活動が活発かつ人口密度の高い沿岸部でも、沖合に地震観測所がない地域が多いことだ。そのような海域で光ファイバーをセンサーとして用いて歪みを計測する分散型音響センシングによる地震観測の実証実験を、カリフォルニア工科大学地震研究所がおこなっている。チリから米国まで延びる光海底ケーブルのチリ側50キロの8960か所に、2022年6月10日から同14日までセンサーを設置し、地震を観測した。この簡易なセンサーアレイでも陸上の観測所より3秒早く緊急地震速報が得られたという。研究結果はThe Seismic Record誌に掲載された。
【関連リンク】
https://doi.org/10.1785/0320230018
(2023年10月19日)

研究開発情報:気候変動によって熱帯性低気圧シーズンの開始が早まっている

生命・財産に大損害を与える強力な熱帯低気圧は、多くが初秋に発生する。気候変動によって、熱帯の海洋の大部分で熱帯低気圧シーズンの開始が早まっている。1980年代以降、北半球では10年当たり3.7日、南半球では10年当たり3.2日早まっている。このシーズンの早期化は、熱帯低気圧が急速に強力化するシーズンの早期化と関連しており、海面から得られる運動エネルギーの限界および海洋貯熱量が熱帯低気圧に適した状態になる時期の早期化が有利に働いている。複数の地球気候モデルによるシミュレーションによると、こうした海洋状態の出現を早めているのは、主として温室効果ガスによる温暖化である。強力な熱帯低気圧のシーズンが早期化すると、夏に多い他の原因による豪雨と相互作用して、被害がさらに大きくなるおそれが強い。研究は清華大学、ハワイ大学マノア校、南方科技大学(深圳)、中国海洋大学の研究者が共同でおこない、結果はネイチャー誌に掲載された。
【関連リンク】
https://doi.org/10.1038/s41586-023-06544-0
(2023年10月9日)

研究開発情報:同時多発的な大規模林野火災が米国西部で増える

今世紀の米国西部では温暖化により、4平方キロメートル以上の大規模林野火災が同時に複数発生することが珍しくなくなり、1年間にそうした火災が多発する確率が今世紀末までに2倍以上に上がり、林野火災シーズンの終わりが11月以後に長引くという研究を、アメリカ大気研究センターなどの研究者チームが発表した。この傾向の下では、異なる地域の消防組織が互いを援助して消火することが難しくなるので、消防資源の配分・配置・使用に関する方針の再検討が求められる。研究結果はオーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)のInternational Journal of Wildland Fireに掲載された。
【関連リンク】
https://doi.org/10.1071/WF22107
(2023年10月3日)

研究開発情報:大木の残骸がカリフォルニアの林野火災を大きくしている

悪化するカリフォルニア州での林野火災を管理するためには、何が燃料となっているのかを知る必要がある。カリフォルニア大学アーバイン校の研究チームによると、シエラネバダ山脈では数十年前に倒れた大木の残骸が主要な燃料となっている。2021年のKNPコンプレックス火災の煙における炭素14の比率を分析したところ、倒れた大木のような大型の燃料の煙と一致していた。米国西部の森林の地面に大型の燃料が増えたのは最近数十年の森林管理方針の結果だが、それが主要な燃料となっているという発見は、火災管理の改善に役立つ。大木の残骸は野生生物の住みかとなっているうえに需要もないので、森林から撤去するわけにはいかないが、消防による防火目的の火入れの際にこの研究結果が役立つと考えられる。研究結果はEnvironmental Research Letters誌に掲載された。
【関連リンク】
https://doi.org/10.1088/1748-9326/aced17
(2023年10月2日)

研究開発情報:21世紀半ばの洪水リスクを200メートルメッシュで予測

21世紀半ばの米国北東部における降水、河川流、内陸洪水に対する気候変動の影響を予測するため、新たなデータセットを米エネルギー省アルゴンヌ国立研究所が開発した。このデータセットに対して、1995-2004年と2045-54年の気候モデル3個ずつのシミュレーションをおこなった。同研究所のスーパーコンピュータを用いて、200メートルメッシュで内陸洪水リスクを予測した。冬に河川流が異常に増え、内陸洪水が激甚化・広域化し、蒸発散が増えて土の湿度が上がる一方、積雪は減ると予測した。研究チームはどのような情報に需要があるのか理解するため、AT&Tおよびニューヨーク電力公社と協力した。今後はモデルを改良して、シカゴ都市圏の住宅保険料や電気料金に影響する洪水・干ばつリスクのシミュレーションをおこなう。研究結果はJournal of Hydrology誌に発表された。
【関連リンク】
https://doi.org/10.1016/j.ejrh.2023.101371
(2023年9月29日)

研究開発情報:米国の州・自治体の減災計画は改善されていない

頻繫化・激甚化する自然災害に対し、米議会が2000年に制定した減災法により、州・自治体は減災計画を備えて定期的に更新する義務を負っている。しかし、カンザス大学の研究によると、州・自治体の減災計画は改善されていない。減災計画の目的は、安全な土地へ開発を誘導し、既存の住宅・事業所・道路など重要資産の損害を減らすことである。ところが、フロリダ州、ジョージア州、ノースカロライナ州の合計84自治体の計画を分析したところ、2000年後半の計画と比べて、2010年代半ばの計画はほとんど改善されていなかった。計画策定への市民の参加と地域社会への広報だけは改善したが、他の地域計画との統合は改善がわずかで、土地利用政策と財産防護政策は改善していなかった。最低基準をこなすだけの自治体が多いので、減災法は自治体に計画の動機を与えるという目的を果たしていない。研究結果はJournal of Planning Education and Research誌に掲載された。
【関連リンク】
https://doi.org/10.1177/0739456X231197182
(2023年9月20日)

報告書など:全米アカデミーズ「2023年秋に向けて新型コロナ、インフルエンザおよびRSウイルスワクチンの接種の受容を促す」

2023年秋は史上初めて、新型コロナウイルス、季節性インフルエンザ、RSウイルスという3つの呼吸器系感染症のワクチンが同時に接種可能となる。これらのワクチンを多くの人が接種すると、秋から冬にかけて患者数・入院者数・死者数を抑制し、医療システムの負担、経済的損失、個人・家族のストレスを軽減することができる。本書は科学コミュニケーション、意思決定、社会学、人類学、社会心理学の最新の研究に基づいて、2023年秋に向けたワクチン接種戦略を解説する。
【関連リンク】
https://nap.nationalacademies.org/catalog/27261/
(2023年10月発行)

報告書など:全米アカデミーズ「緊急対応―州運輸局が使用している組織と活動のモデル」

大規模な緊急事態や災害は、気象を原因とするものを含め、非日常的ではあるものの頻繁化・激甚化しつつある。緊急事態には人的・物的資源を急拡大して即応した後、対応と復旧の活動を長期間維持しなければならない。そうした対応を米国各州の運輸局がおこなう能力は、事前に職員をどのように訓練して調整するかに大きく左右される。この課題に信頼性・柔軟性・回復力をもって対処する方法を、各州運輸局は互いから学ぶことができる。本書は異なる方法の長所と短所を検討するための枠組みと事例を提供する。
【関連リンク】
https://nap.nationalacademies.org/catalog/27287/
(2023年10月発行)

報告書など:GAO報告書「COVID-19救援―2023年3月31日時点での州政府・自治体による財政復興資金の支出」

新型コロナウイルスからの復興資金として、2021年の米国救済計画法に基づいて米財務省が州政府や自治体に分配した3500億ドル(38兆円)の支出をGAO(米議会の政府監査院)が調査した。最新のデータが得られた2023年3月31日時点で、50州の政府は分配された資金の45%(882億ドル)、自治体は分配された資金の38%(479憶ドル)を支出した。州政府はその45%(395億ドル)、自治体は68%(324億ドル)を、新型コロナウイルス流行のため減った歳入の補填に用いた。自治体の約14%は、米国救済計画法により分配された資金の使途を財務省に報告する義務を果たしていなかった。
【関連リンク】
https://www.gao.gov/products/gao-24-106753
(2023年10月11日、20ページ)

報告書など:FEMA「高齢者のための災害準備指南」

高齢者と介護者が災害に備えるにあたって踏むべき3つの簡単な準備段階について説明する。第一に、高齢者が自分のリスクを評価し、緊急時のニーズを理解する。第二に、本人のニーズに合わせて、包括的な緊急計画を立てて、緊急誌対応キットを用意する。第三に、緊急時に本人を助けることができる家族、友人、介護者、近所の人、礼拝の仲間などで強い支援ネットワークを構築し、緊急計画に含める。その方法を、本人のニーズを洗い出すための自己評価に役立つ使いやすいワークシートや、緊急計画を立てるために必要なチェックリストを添付し解説する。
【関連リンク】
https://www.ready.gov/sites/default/files/2023-09/ready-gov_disaster-preparedness-guide-for-older-adults.pdf
(2023年9月28日発行、20ページ)