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6月分


ニュース:ロサンゼルス郡北西部で大規模林野火災

6月15日にカリフォルニア州ロサンゼルス郡北西端のゴーマン・ポスト・ロードで発生したポスト火災は、同州の南北を結ぶ州間高速道路5号線に沿って約60平方キロメートルを焼き、住民1200人に避難命令が出た。消防士1100人以上とヘリコプター6機が出動しているが、6月17日時点で8%ほどしか消火されていない。焼失面積は今年のカリフォルニアの林野火災で2番目に大きい。
(2024年6月18日)

ニュース:熱波と林野火災の煙は米連邦法上の大災害となりうるか

米政府の指定する大災害に熱波および林野火災の煙の被害を含めて、被災地の州政府や世帯に支援金が給付されるようにすることを求める請願書を、労働組合、環境保護団体、公衆衛生団体など30団体が連名でFEMA(連邦危機管理庁)に提出した。法令は支出の対象となりうる災害として火災など16種類を例示しているが、歴代大統領はパンデミックなど他の事態にもFEMA支援金を支出してきた。しかし、バイデン大統領は2022年のヒートドームに際してカリフォルニア州知事の大規模災害宣言要請を拒否しており、米大統領が熱波に際してFEMAの災害支援金を支出したことはない。FEMAのロセンバーグ報道官は、スタッフォード災害救済・緊急事態支援法は熱波を大災害と宣言することを妨げていないと述べた。連邦法上の大災害とは、州・自治体の対処能力を超える災害であり、緊急事態とは、生命・財産・公衆衛生を守るため連邦政府の支援が必要だと大統領が判断した事態を指す。請願を主導した生物学的多様性センターのスー弁護士は、FEMAが災害のコストを物的損害だけで計算し、死亡と医療のコストを算入していないと主張している。
(2024年6月17日)


ニュース:新型コロナ以外の感染症が増加

新型コロナウイルス対策によって感染が抑えられていたインフルエンザ、麻疹、結核、百日咳など13種類の感染症が世界的に拡大していることが、60以上の公衆衛生機関等のデータから明らかになった。2022年初め以来、44か国で1種類以上の感染症の症例が、新型コロナウイルス流行前の基準値と比べて10倍以上に増えている。英国の疾病予測会社エアフィニティと米ブルームバーグ通信社が共同で分析し、三つの理由を挙げている。第一に、麻疹、ポリオ、結核、百日咳のワクチンの小児接種率が下がった。第二に、インフルエンザ、RSウイルス、マイコプラズマ肺炎、侵襲性A群レンサ球菌への感染が行動制限によって抑えられ、感染しやすい人が増えた一方で、感染症監視体制が整って報告率が上がった。第三に、気候変動がデング熱やコレラの感染拡大を助けており、デング熱はアルゼンチンや南欧など新しい地域に広がっている。エアフィニティが10種類の感染症についてインタラクティブ地図を公開している。

【関連リンク】
https://www.airfinity.com/articles/global-surge-in-infectious-diseases-as-over-40-countries-report-outbreaks-10
(2024年6月14日)

ニュース:FEMAの災害復旧・被災者支援の資金が8月に枯渇するおそれ

FEMA(米連邦危機管理庁)の災害支援資金が最近のペースで支出され、米議会が補填しなければ、ハリケーンシーズン最中の8月までに枯渇すると、FEMAのフックス副長官が警告した。枯渇が近づいた場合は、救命と生命維持のための活動を優先し、被災者個人への支援金やハリケーン災害廃棄物の撤去費用の支払いを停止する。9月にはFEMAは70億ドル(1.1兆円)の赤字に陥る見込みだという。実際、2023年8月にはハリケーン・イダリアがフロリダ州やジョージア州に合計36億ドル(5300億円)の損害を与え、ハワイ州マウイ島が壊滅的な林野火災に見舞われる一方で、FEMAの災害支援資金が底をついたので、他州における過去の災害からの復旧のための事業を突然中止せざるを得なくなった。
(2024年6月4日)

ニュース:世界保健機関がエムポックスの感染拡大制御のための新たな枠組みを発表

エムポックスの感染拡大が世界中で続いているので、突然変異によって重症度や死亡率の高い天然痘に似た病原ウイルスが新たに出現するリスクがある。そこで世界保健機関(WHO)は、エムポックスの感染防止・抑制の新たな戦略的枠組みを公表した。疫学的サーベイランス、リスクコミュニケーションと地域社会への働きかけ、一次医療や予防接種などの臨床医療を含むすべての医療事業の協同と調整が不可欠だとしている。

https://www.who.int/publications/i/item/9789240092907
(2024年5月24日)

研究開発情報:防災・危機管理に関わる渉外・広報専門家の団体が発足

防災・危機管理に関わる渉外・広報の訓練、最善慣行の普及、歴史の記録、顕彰、ネットワーキングなどを目的とする非営利団体「危機管理渉外協会」(EMEAA)を、米国の専門家9名が発足させた。ロバート・ジェンセン理事長はFEMA(連邦危機管理庁)の渉外担当副長官や国土安全保障省の渉外担当副次官補を歴任した。

【関連リンク】
https://www.em-eaa.org/
(2024年6月17日)

研究開発情報:入りにくい地震被災地の建物を評価するためのハイブリッド・モデル

災害後における建築の基準や慣行の評価は専門家が担ってきたので、被災地調査の速さや範囲には限りがある。住民がデータを収集し、遠くの専門家と通信して協力するハイブリッド型の災害評価方法は、専門家の現地入りが難しい状況などで有望な代替策となりうる。米2021年8月のハイチ大地震後、治安問題のため外国人の参加が制限される中、迅速・広範囲な評価に続いて、特定の種類の建物を詳しく評価した多段階ハイブリッド評価に関するノートルダム大学などの研究者の論文が、Bulletin of Earthquake Engineering(地震工学会報)に掲載された。まず、ハイチの一般市民のデータ収集者40人が1万2500軒以上の建物を撮影し、国外の数十人の技術者に画像を送信した。その画像4万枚弱から、土着建築の家屋200軒以上を機械学習によって選び出した。ハイチのデータ収集者にもうひとつのスマートフォンアプリを提供して、この家屋のうち30軒について、国外の技術者が対策を立てるのに必要な詳しい文書を作成した。ハイブリッド評価により、2021年ハイチ大地震に家屋がどれだけ耐えたかは、筋交いの種類と均一性によって決まったことが明確に示された。成果物である公開データセットは、土着建築を強化することによって低所得国で多様な災害から人命を守る取り組みに貢献し続けている。

【関連リンク】
https://doi.org/10.1007/s10518-024-01927-8
(2024年6月公開)

研究開発情報:カリフォルニア林野火災の影響で5万人以上が死亡

2008年から18年までの間にカリフォルニア州で起きた林野火災の煙害が、州内だけでも5万2000人以上の命を奪ったとする、カリフォルニア大学ロサンゼルス校などの研究者の論文がScience Advances誌に掲載された。煙の微小粒子状物質(PM2.5)が呼吸器・心疾患の原因となって死亡率を上げる効果を数量化するため、ZIPコード(郵便番号)レベルの死亡率データと、林野火災の煙の毒性の推定に基づく用量反応係数を含む、PM2.5の濃度反応関数を用いた。ふたつの曝露シナリオにおいて、2008-18年の林野火災のPM2.5が寿命を縮めたといえる死者は5万2480人ないし5万5710人、それによる経済的損失は4320億ドルないし4560億ドル(43.2兆円ないし45.6兆円)にのぼった。気候変動の影響のひとつである、林野火災の増加による人命の損失と経済的負担が、従来知られていたよりも大きいことがわかった。

【関連リンク】
https://doi.org/10.1126/sciadv.adl1252
(2024年6月14日)

研究開発情報:バベシア症に抗マラリア薬が有効か

バベシア症はダニが原虫を媒介し、発熱や溶血性貧血を起こす。米国では2010年代に報告例が増え、北東部と中西部の10州に広がった。食品医薬品局(FDA)はバベシア症の治療薬の開発を促進するため、マラリア予防薬のタフェノキンを希少疾病用医薬品候補に指定した。60 Degrees Pharmaceuticals社とタフツ大学病院が二重盲検ランダム化試験で第2相治験をおこなう。参加者にはタフェノキンまたはプラシーボを1日1回4日間投与する。エンドポイントは、バベシア症の症状である発汗、関節痛、咳、食欲不振、筋肉痛、頭痛、悪寒・震え、発熱、吐き気・嘔吐、疲労のどれも自覚しない日が7日間続くことである。
(2024年6月10日)

研究開発情報:新型コロナ後遺症が3年以上続くおそれ

新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(後遺症)は、呼吸器系などほとんどの器官系に及ぶ。米退役軍人省などの研究者は、同省の病院の患者から新型コロナ感染者と対照群のコホートを作って3年間追跡し、死亡と後遺症のリスクを推定した。入院しなかった感染者は1年後の死亡リスクが増加せず、後遺症のリスクは3年間で下がったものの、3年目でも障害調整生存年数を1000人当たり9.6年(95%信頼区間0.4-18.7年)減らす効果があった。入院患者の場合、死亡と後遺症のリスクは3年間で下がったものの、3年目の死亡リスクは罹患率比1.29(95%信頼区間1.19-1.40)、3年目の障害調整生存年数の減少は1000人当たり90.0年(95%信頼区間55.2-124.8年)にのぼり、死亡と病気の重荷が残ることが確認された。論文はネイチャー・メディシン誌に掲載された。

【関連リンク】
https://doi.org/10.1038/s41591-024-02987-8
(2024年5月30日)

報告書など:GAO報告書「高リスクシリーズ 米国が直面する重要なサイバーセキュリティ上の課題に対応するための緊急な対策が必要である」

米政府機関は2022会計年度(21年10月-22年9月)に3万0659件のITセキュリティインシデントを国土安全保障省の緊急対応チーム(CERT)に報告した。サイバー脅威を軽減するためには米政府と外部のパートナーの共同での行動が欠かせない。米政府のサイバーセキュリティには4つの主な課題があり、それに対し合計10個の措置が緊急に必要である。その4大課題とは、1)包括的なサイバーセキュリティ戦略を定めてその実施を有効に監督すること、2)米政府のITシステムと情報を保全すること、3)重要インフラのサイバーセキュリティを守ること、4)民間人のプライバシーと秘密データの保護である。GAO(米議会の政府監査院)は2010年以降、4大課題への対策1610件を推奨してきた。2024年5月時点で米政府はそのうち1043件を実施したが、567件は実施していない。

【関連リンク】
https://www.gao.gov/products/gao-24-107231
(2024年6月13日発行、89ページ)

報告書など:全米アカデミーズ「林野火災による温室効果ガス排出 監視・モデリング・管理の改善のために」

人間活動によって林野火災が激甚化・頻繁化すると、林野火災による温室効果ガス排出も増えて、人間活動による温室効果ガス排出を実質ゼロ化する努力を打ち消すおそれがある。全米アカデミーズが2023年9月13日から15日にかけて開催したワークショップでは、林野火災による温室効果ガス排出の計測とモデリングを改善する余地を探し、行動計画に取り入れることが可能な先住民などの火災管理慣行について議論した。温帯・北方林・熱帯など世界の生態系の火災パターンと炭素バランスは気候変動と土地利用の変化の影響を受けている。その影響を緩和するため、各地域・生態系に適した多様な戦略を利用できることが、議論の中で指摘された。林野火災とその温室効果ガス排出に対する理解が深まり、減災と管理に役立つ情報がさらに提供され、林野火災の温室効果ガスが国別排出量に算入されるなら、実務者・地域社会・意思決定者は、今後起こりうる林野火災によりよく備え、適応し、対応できる。

【関連リンク】
https://doi.org/10.17226/27473
(2024年6月発行、94ページ)

報告書など:全米アカデミーズ「災害や緊急事態に対する医療・公衆衛生準備態勢に関するフォーラム 2023年年次報告書」

全米アカデミーズが2007年から開催している「災害や緊急事態に対する医療・公衆衛生準備態勢に関するフォーラム」では、官民の指導的立場の人々が災害、公衆衛生上の緊急事態および新たな脅威に対する米国の準備態勢・対応・復旧の改善策を議論している。政策に関する掘り下げた議論と協力を通じて障壁を特定し、国の安全を保障・維持し、災害復旧を後押しし、回復力を高める解決策を探った。

【関連リンク】
https://doi.org/10.17226/27826
(2024年6月発行、20ページ)