10月分
ニュース:ハリケーン災害の誤・偽情報をFEMAが訂正
米南東部におけるハリケーン・ヘリーン、ミルトンの災害に関して、FEMA(連邦危機管理庁)の災害支援金が不法移民の住居費に流用されたため枯渇したとか、米政府は住居を失った被災者にも750ドル(11万円)しか支援しないとかいう誤・偽情報が出回り、FEMAは自らのウェブサイトなどで訂正を発信している。自然災害発生後、行政の対応に関する誤・偽情報が広まることは珍しくない。ふつうは一般市民がSNSアカウントに投稿して始まる。しかし今回は、トランプ前大統領の発言に端を発するものもあり、広まりやすくなっている。州・自治体職員でも災害支援に関する連邦法を熟知している人は少ないので、彼らだけでは誤・偽情報の訂正は難しい。誤・偽情報を信じた市民がFEMA職員や気象予報士を脅迫する事件も発生している。
(2024年10月18日)
(2024年10月18日)
ニュース:米国の極右団体が自然災害に乗じて思想と偽情報を拡散
米国の極右団体は、大型ハリケーン・ヘリーン、ミルトンの被害に乗じて、反ユダヤ思想などの拡散を試みている。過激思想集団が災害支援に参加して思想を広め、新しい参加者を募ろうとすることは、かねてからみられた行動である。無関係な災害支援者を危険に陥れたり、彼らに対する市民の信頼を損なったりするおそれがある。9月下旬から10月上旬にかけて、白人至上主義団体「パトリオット・フロント」はノースカロライナ州やフロリダ州でがれき除去などに参加し、自身の活動がアメリカ第一主義を体現していると宣伝し、同時に、米政府はハリケーン被災者よりもイスラエルのことを気にかけているという主張を展開した。極右団体「プラウド・ボーイズ」から派生した「ザ・ウェスタン・ショービニスト」も、イスラエルのための海外派兵によって国内の災害支援がおろそかになっているとして、「パトリオット・フロント」など極右が代わりに支援しているなどと主張している。
(2024年10月15日)
(2024年10月15日)
ニュース:フロリダに再びハリケーン襲来
メキシコ湾で発生したハリケーン・ミルトンは、メキシコのユカタン州で豪雨により死者3人、行方不明6人の被害をもたらした後、10月9日、風速54メートルで米フロリダ州南西部のサラソタ郡シエスタ・キーに上陸した。フロリダ州北部に巨大ハリケーン・へリーンが上陸した2週間後だった。ハリケーン・ミルトンがフロリダ半島を横断する間、24人以上が豪雨災害で死亡した。セントピーターズバーグ市のドーム型スタジアムのトロピカーナ・フィールドは、災害救援拠点とされたが、ガラス繊維の屋根が破壊された。フロリダ州の停電戸数は最大300万戸、11日に200万戸、14日でも75万戸に上った。
(2024年10月14日)
(2024年10月14日)
ニュース:米最大の水道会社がセキュリティインシデントをSECに報告
米国14州で1400万超の世帯に水道サービスを提供するアメリカン・ウォーター・ワークス社は10月3日、同社のITシステムに影響を及ぼすサイバーセキュリティインシデントが発生したと米証券取引委員会に報告した。同3日、コンピュータネットワークとシステムに不正アクセスがあったものの侵入は検知されず、基幹業務・施設への影響やランサムウェア集団からの接触もないという。同社は安全が確認されるまで、顧客ポータルと料金精算システムをオフラインにした。
(2024年10月8日)
(2024年10月8日)
ニュース:米国土安全保障長官がハリケーンを理由にFEMA補正予算を要請
米議会は大統領選挙前の政府閉鎖を避けるため、9月30日までの旧会計年度(2024年度)と同じ予算を12月20日まで比例配分する継続決議を9月25日におこなった。FEMA(連邦危機管理庁)の災害支援予算は、2025年度末までに200億ドル(2兆9000億円)を支出することを特別に認めた。国土安全保障省のマヨルカス長官は10月2日、今年のハリケーンシーズンの終わりまでFEMAが復旧や被災者支援を続けるには、この予算では足りないと記者団に述べた。バイデン大統領も、ハリケーン・へリーン被災地選出の民主・共和両党の上院議員も、FEMAの補正予算を議決するため議会の再開を呼びかけている。しかし、ジョンソン下院議長は、ハリケーン・へリーンの損害と復旧費用が評価されていないという理由で、大統領選挙前に議会を再開する可能性を否定している。
(2024年10月2日)
(2024年10月2日)
ニュース:米南東部にハリケーン・へリーンの大きな被害
メキシコ湾を北上したハリケーン・へリーンは9月26日、カテゴリー4(風速58-70メートル)の勢力を保ってフロリダ州北部のビッグベンド地域に上陸した。3メートルの高潮が達し、トレーラーハウスなどが流された地域もある。フロリダ州南部からノースカロライナ州まで650キロメートル以上に広がる地域に豪雨をもたらした後、弱まって北西へ移動した。死者・行方不明者はノースカロライナ州だけで120人以上、7州合計で310人を超え、大西洋のハリケーンとしては2017年のハリケーン・マリア以来、米本土のハリケーンとしては05年のハリケーン・カトリーナ以来もっとも多い。バイデン大統領はノースカロライナ、フロリダ、サウスカロライナ、ジョージア、バージニアの5州について大規模災害を宣言した。被害額は被保険物件100億ドル(1.4兆円)以上、その他の物件200億ドル(3兆円)以上と民間企業が推計している。政府系の洪水保険に加入していない世帯が多いことが、住居等の再建を妨げるおそれが強い。
(2024年10月2日)
(2024年10月2日)
ニュース:猛暑で氷河の後退が加速
スイスの氷河監視組織GLAMOSによると、記録的な量の氷河が消失した一昨年と昨年に続いて、今年も猛暑によりスイスの氷河が平年以上の速さで後退した。8月の平均気温は、標高3600メートル近い場所でも0度以上と暖かかったので、今年はスイスの氷河の2.4%が消失した。2010-20年は毎年平均1.9%が消失したが、22年には5.9%、23年には4.4%が消失した。冬と春は降雪量が多かったので、氷河への温暖化の影響が和らぐと期待されたが、猛暑で状況が一転した。氷の表面がサハラからの砂塵に覆われて茶褐色になり、太陽光を反射しにくくなったことも影響した。
(2024年10月1日)
(2024年10月1日)
研究開発情報:船舶消火設備の損傷に自律的に対応する技術
韓国機械研究院(KIMM)バーチャル工学プラットフォーム研究部は、船上の消火設備の配管が破損したとき、60秒以内に破損個所を迂回して消火を続ける「スマートバルブシステム」を開発した。現代重工業が建造中の3200トンの船に搭載し、動作確認に成功した。舶内で自律的に消火活動を行う実験に成功した。次世代駆逐艦や掃海艦艇に搭載し、韓国の少子化による乗員不足への対策や、生残性向上の効果が期待されている。
(2024年10月18日)
(2024年10月18日)
研究開発情報:米国におけるハリケーン等の災害関連死
米本土におけるハリケーンや熱帯暴風雨は、発災後15年間にわたって1個当たり合計7000人から1万1000人の超過死亡をもたらしているという論文が、ネイチャー誌に掲載された。カリフォルニア大学バークレー校などの研究者2人が、1930-2015年のハリケーン等501個の効果を、死亡率の時系列データの逆畳み込みにより分析した。これらのハリケーン等による直接の死者数(平均24人)より桁違いに多い。老後資金を住宅修繕に使った人が医療支出を節約したり、親族が転居した人が次の災害の際に支援を受けられなくなったり、自治体の公衆衛生支出が減ったりすることで、被災者が気づかない長期的影響が死亡率を上げた可能性がある。1930年以降のハリケーン等による災害関連死は360万人から520万人にのぼり、米本土における死亡リスクの分布に影響しており、0-44歳と黒人の死亡率への影響がとくに大きいと考察している。
【関連リンク】
https://doi.org/10.1038/s41586-024-07945-5
(2024年10月2日)
【関連リンク】
https://doi.org/10.1038/s41586-024-07945-5
(2024年10月2日)
報告書など:GAO報告書「全米アカデミーズ「アルボウイルスの脅威を減らし、公衆衛生準備態勢を強化する」
ジカ熱、西ナイル熱、デング熱、黄熱といった、蚊やダニが媒介するアルボウイルス病は、世界で毎年数十万人の命を奪っており、気候変動によって感染地域が広がり続けている。全米アカデミーズは既知および新規のアルボウイルス病の脅威を減らす方法を、公衆衛生準備態勢と能力構築の面から探るため、2023年12月に公開のワークショップを開催した。昆虫学、公衆衛生、生態学、ウイルス学、免疫学、疾病モデル、都市計画の専門家が参加した。
【関連リンク】
https://doi.org/10.17226/27774
(2024年10月発行、147ページ)
【関連リンク】
https://doi.org/10.17226/27774
(2024年10月発行、147ページ)
報告書など:「宗教組織および地域組織への働きかけ―危機管理担当者が計画策定にあたり検討すべき事項」
宗教組織および地域組織の回復力と危機管理能力を高めるため、災害の発生前、最中そして復旧期に地元当局が働きかけるうえでの最善慣行を概観する。
【関連リンク】
https://www.fema.gov/emergency-managers/national-preparedness/plan
(2024年10月1日公表)
【関連リンク】
https://www.fema.gov/emergency-managers/national-preparedness/plan
(2024年10月1日公表)
報告書など:GAO報告書「ダーティ・ボムを防ぐ―原子力規制委員会は放射性物質セキュリティ・リスクの一部を放置している」
放射線物質セキュリティを担当する米政府省庁は、脅威や脆弱性の評価を共有している。しかし、リスク評価において社会経済的影響を考慮する程度が異なるので、セキュリティのための行動が異なる。国家核安全保障局と国家安全保障省大量破壊兵器対策室は、ダーティ・ボム(汚い爆弾、放射性物質散布装置)が重大な社会経済的損害をもたらすというリスク観に基づいて活動している。両者と税関・国境警備局は、GAO(米議会の政府監査院)が推奨したリスク減少策のほとんどを実施した。原子力規制委員会(NRC)のリスク観は異なり、特定の死亡・健康影響を防ぐために規制を定めており、GAOが2012-24年に推奨した18の対策のうち7つしか実施していない。また、NRCは自らの高度セキュリティ要件の対象としていない第3種放射性物質のセキュリティを強化していない。
【関連リンク】
https://www.gao.gov/products/gao-24-107014
(2024年10月3日公表、50ページ)
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https://www.gao.gov/products/gao-24-107014
(2024年10月3日公表、50ページ)
報告書など:「ハワイ・マウイ島林野火災の原因報告書」
2023年のハワイ・マウイ島林野火災の原因について、マウイ郡消防・公共安全局は米司法省アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局の協力のもと、報告書を10月2日に公表した。23年8月8日朝、送電線が強風により切断されて、溶け落ちた金属と落下した電線から出火し、消防が消し止めた後、燃えさしが午後に再び燃え上がったと結論した。消防は6時34分に発生した火災を鎮火し、炎も煙も燃えさしもないことを数時間にわたり確かめてから他の現場へ向かった。しかし、発見できなかった燃えさしが朝の火災現場の隣の溝に移動し、可燃物に付着して同日14時52分に再び発火した。
【関連リンク】
https://www.mauicounty.gov/DocumentCenter/View/149693/FI23-0012446-Lahaina-Origin-and-Cause-Report_Plus-Appendix-A-B-C-Redacted
(2024年10月2日公表、289ページ)
【関連リンク】
https://www.mauicounty.gov/DocumentCenter/View/149693/FI23-0012446-Lahaina-Origin-and-Cause-Report_Plus-Appendix-A-B-C-Redacted
(2024年10月2日公表、289ページ)
報告書など:「米国土安全保障省情報・分析局「2025年国土安全保障脅威評価」
暴力的過激派、国際犯罪組織、敵対的国家、サイバー空間の悪意ある者が複合的な脅威を米国内にもたらしている。これらの脅威は対象や目的がまちまちだが、予期しない形に組み合わさって、地域社会に危害を加えたり、米国経済を混乱させたりすることがある。さらに、技術の進歩、気候変動、自然災害がこれらの脅威を悪化させるおそれがある。テロの脅威は高止まりする。暴力的過激派が2024年の選挙など国内の社会・政治情勢に反応したり、米国内における攻撃を正当化・助長するため国際的出来事を利用したりする可能性を、当局は懸念している。奇襲攻撃をおこなうおそれがもっとも強いのは、ローンオフェンダーと小集団である。外国テロ組織とその支持者は、米国内における攻撃を実行・触発する意思を持ち続ける。外国テロ組織に触発された過激派は、宗教組織やソフトターゲットも攻撃している。中国、イラン、ロシアなどの国家は米国の社会的結束を弱め、米国の制度への信頼を損なうために破壊的な戦術を用いる。とくに中国などは米国に住む民族的・宗教的少数派、反体制派、ジャーナリストを沈黙させ、苦しめるために攻撃し、米国の主権と法治を損なう。生成型AI(人工知能)を使った偽情報作成やサイバー攻撃の脅威も高まっている。
【関連リンク】
https://www.dhs.gov/publication/homeland-threat-assessment
(2024年10月2日公開、46ページ)
【関連リンク】
https://www.dhs.gov/publication/homeland-threat-assessment
(2024年10月2日公開、46ページ)
報告書など:GAO報告書「サイバー回復力―クラウドストライクによる業務停止が際立たせた課題」
2024年7月、サイバーセキュリティ会社クラウドストライクが更新したソフトウェアの欠陥により、マイクロソフト・ウィンドウズを搭載した世界各地の端末が機能停止するシステム障害が生じた。原因は人的エラーでありサイバー攻撃ではなかったが、2019年に攻撃さされたSolarWinds社のネットワーク監視ソフトウェアに似た脆弱性がみられる。2019年に攻撃されたのはネットワーク監視システムそのものではなく、システムサポートソフトウェアのSolarWinds Orionだった。SolarWinds社のネットワーク監視ソフトウェアは多数の米政府機関が使用していたので、米政府の複数のネットワークが侵入された。サイバーセキュリティの脆弱性を管理・軽減するためには、サプライチェーンのリスク管理、テスト、緊急対応計画、情報共有が重要だとGAO(米議会の政府監査院)は長らく指摘してきた。GAOはこの4分野について、2010年以降の公開の報告書で1624件の対策を推奨してきたが、24年9月現在、528件がまだ実施されていない。
【関連リンク】
https://www.gao.gov/products/gao-24-107733
(2024年9月23日)
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https://www.gao.gov/products/gao-24-107733
(2024年9月23日)