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HOME >  中国展望 (特任教授 柯隆) >  2013年(海外ジャーナリズムの眼) >  建設予定の世界一の超高層ビルの安全性を懸念(中国)

建設予定の世界一の超高層ビルの安全性を懸念(中国)


中国各地で、高さを競い合うように次々に超高層ビルが建設されている。安全性や都市の持続的発展等を軽視しながら建設に走る姿勢に対し、各紙が懸念を示した。

10月4日

昨年末に話題となった湖南省長沙市に建設予定の世界一の超高層ビルの施工開始記念式典(7月20日)が各新聞に取り上げられ、大きな批判を呼んだ。この高さ838メートルの「天空之城(Sky City)」と称する超高層ビルの建設計画を進めているのは、中国の建設大手・遠大集団である。同社は、ドバイの828メートルの世界で最も高いビル「ブルジュ・ハリファ」より10メートル高いビルを建設することで、世界一を狙っている。また、同社は超高速の建設スピードで知られ、「天空之城」も90億元の投資によって10カ月間で完成すると宣言した。しかし、施工がスタートして4日後に、行政の許可がないことを理由に政府の関係部門に建設を中止された。これに対し、遠大集団は、現在建設の申請手続きが進んでいると回答した。

「2012年高層ビル報告書」によると、中国では高層ビルが470棟、建設中は332棟、計画中は516棟、アメリカでは高層ビルが533棟、建設中は6棟、計画中は24棟。2022年に中国の高層ビルは1318棟になり、アメリカの高層ビルの2.3倍になると見込まれている。中国の都市化が加速するなか、各地で高さを競って高層ビルが次々と建設されている。昨年施工を開始した武漢市の緑地センターは606メートルの高さになったが、高さ660メートルの平安金融センターの建設が深セン市でスタートした。一方、青島市では700メートルのビルの建設が予定されており、中国一の超高層ビルになるだろう。超高層ビルの建設ラッシュのさなか、世界一を狙う「天空之城」に対し、専門家の間に反対の声が広まった。   
  
「驚異的な建設スピードには安全面での危険が潜んでいる。スピード重視は安全性を犠牲にすることになる。セメントの強度、コンクリートや柱には複雑な工程が必要で、低階層の安定性が確認できてから、徐々に建てて行くため、時間がかかることが避けられないと宝佳集団の建築士鲁萌氏が語った。高層ビルの本来の機能は、少ない土地で多くの人に利便性の高い公共施設を提供することだが、各都市が都市イメージプロジェクトとして超高層ビルを建てており、消防、耐震性、インフラなどにおいて危険要因が潜んでいる。なお、高層ビルの建設は地方のGDPに貢献するが、過度の建設は不動産バブルをもたらすほか、ビルを高く建設すればするほどコストが高くなり、維持費の問題も避けられない。将来の高層ビルの建設においては、高さのみ指標にするのではなく、安全性、特にエコ性能を考慮すべきだろうと国家住宅と居住環境工程技術研究センターの仲继寿氏が語った。」(人民日報)

「地方政府は都市のイメージプロジェクトによって地域の知名度を高めたい。企業は土地と利益を求める。こうして、「天空之城」は両者を利するプロジェクトとなった。プロジェクトの建設確認許可が完全に下りないなかで施工をスタートしようとしているのは、目先の利益のみ追求し、公共の利益と安全性を二の次にしているからだろう。このような超高層ビルを建てれば、はたして都市の地位を高めるだろう。ビルの高さは、都市の文明レベルを表すものではない。秩序よく管理されている都市、公平な社会を実現した都市、公正な司法ルールを実現した都市、これらは、ビルの高さより、遥かに世界から認められるところであろう。」(新華網)

「経済的な持続発展性からみて、無意味な高層ビルの建設には誇るものが何もない。世界一の超高層ビルに住むことは、世界一充実した社会の福利厚生、世界一レベルの教育機関と医療施設、世界一きれいな自然環境と比べて、一般の民衆にとって大事だろうか。政府がこのプロジェクトを中止したことに賛成する。但し、これは世論によるプレッシャーではなく、経済的な持続発展性と民衆の生活品質を重視するための決断だと期待したい。施工開始の記念式典の際、皮肉にも主催側が宮崎駿の『天空の城ラピュタ』の主題曲を流していた。『天空の城ラピュタ』は宮崎駿が現代化や工業化に対する批判と自然への回帰、尊重を訴えた作品であり、まさに世界一の高層ビルに代表される変形した現代文明への葬歌になっただろう。」(光明網)

(柯隆 編集)