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第9回 中国経済はデフレの入り口に差し掛かっているのか(2月16日)


2014年の中国経済成長率(実質GDP伸び率)は7.4%だった(速報値)。グローバル経済と中国経済のファンダメンタルズを考えれば、決して低い成長水準とはいえないが、マーケットでは、中国経済の先行きについて悲観論が漂っている。中国人民銀行と中国社会科学院は、15年の成長率についていずれも7%程度と見込んでいる。仮に経済成長率が7%を下回れば、雇用がさらに悪化する恐れがある。

研究者の間では、中国が人口オーナス期に入り、労働の供給が減少し、それによって経済成長が減速しているといわれている。しかし、景気が減速しているのは労働人口の減少だけでなく、構造転換の遅れなど複雑な原因によるものである。問題は、労働人口が減少し、景気が減速する前提で、雇用が改善しないことにある。すなわち、景気が減速することによって雇用はいっそう悪化する。景気と雇用の縮小は、日本の失われた20年を思い起こさせる。

15年の下期に入り、PMI(購買担当者景気指数)は悪化する一方である。国家統計局が発表する失業率はほとんど変動がなく実態を反映していない。都市部の消費者物価指数は1%台に低下しているが、家計の可処分所得の伸びは経済成長率を大きく下回っているため、景気は逆回転している。このままいけば、中国経済はデフレに突入し、失われた20年の日本の轍を踏むことになる。

こうした現実をポリシーメーカーたちが知らないわけはない。14年下期に入ってから政府は預金準備率を引き下げたり、金利を調整したりして小幅ながら金融緩和を実施している。しかし、経済学者が指摘する通り、金融政策は紐のようなものであり、景気が過熱するインフレのときには、金融引締政策を実施することで過熱する景気を紐で引っ張ることができるが、景気が後退する局面では、その同じ紐で景気を押し上げることができない。

気になるのは、ポリシーメーカーの景気調整に関する政策スタンスである。習近平政権は目下の7%程度の成長が常態化するとみてそれを「新常態」と定義している。景気の現状認識における問題意識として正しいものだが、この新常態を持続していくには、経済構造の転換が必要不可欠である。すなわち、経済構造の転換に失敗すれば、新常態は持続せず、一時的に景気が大きく落ち込む恐れがある。

中国の景気動向のカギを握る国内要因は国有セクター改革の成否である。胡錦濤政権の10年間(2003-2012年)、国有企業改革を含むほぼすべての改革が先送りされてしまった。その負の遺産を引き継いだ習近平政権は国有セクターの民営化を大胆に推進しなければならない。一方、中国経済の先行きを決定するもう一つの要因は外資の動向である。

外資のなかで、低付加価値輸出製造業の対中直接投資は、人民元の切り上げと人件費の上昇によって海外へ移出する企業が増えるため、減少すると思われる。とりあえず中国に止まるのは中付加価値の製造業であるが、問題は、イノベーション型の高付加価値製造業の対中直接投資が、中国の知財権保護が不十分であるため、それほど増えていないことだ。

そのなかでもっとも気がかりなのは、キャピタルゲインを目的に中国に流れた不動産開発型の投資がこれから大挙して海外へ流れ出す可能性が出てきた。外資を中国に止めるには構造転換するしかない。誕生して2年が経過した習近平政権にとり、これからは正念場である。